記念もの
□喧嘩するほど?
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そうは言ってもきっと、榎木津は私が接吻するまで拗ねたままだろう。
意を決して、私は榎木津に近付く。
幸い、助手たちは留守だ。
榎木津に顔を寄せる。
ギリシア彫刻のような美顔が徐々に近付く。
「やっぱやーめたっ」
「へっ?…んッ」
口付けろと言ったくせに、自分から唇を掠めとる。
真っ赤なまま失語していると、
「もう怒ってない」
と笑われた。
敵わない。
でも、悔しかったからもう一回唇を押し当てると、余計に機嫌をよくさせてしまった。
「こういう猿も悪くない」
「もうしないからね」
―――喧嘩は。
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