記念もの
□シンデレラ☆
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黒の単衣に、黒手甲。
黒下駄に黒足袋。
鼻緒だけが赤い。
「今晩和。魔法使いです」
―――嘘だ。
「嘘じゃないぜ。魔法使いの中禅寺だ」
「人の心を読むなよ。君は誰だい」
「だから魔法使いさ。それ以上出もそれ以下でもない。
そんなことより、君はお城へ行きたいのだろう?」
とんでもなく胡散臭い魔法使いの登場にシンデレラは怯みましたが、『お城』という台詞に気をとられます。
「そりゃぁ行きたいよ。でも僕なんか…」
「僕に任せて起きたまえ。そう、この世に不思議なことなど何もないのだよ」
―――意味が分からない。
真っ黒の自称魔法使いは、外に出たかと思うと、怪しげな呪文を唱えます。
途端に、辺りが明るくなり、何やら巨大なものが家の前に現れました。
「何これ…」
「これは邪魅という妖怪だ」
「妖怪!?」
「さぁ、乗り物の準備は万端だ。あとはそのツギハギをどうにかしよう」
「これに乗るのかい!?」
魔法使いはシンデレラの問いには応えず、怪しげな呪文を再度唱えました。
シンデレラは、もうみすぼらしい姿では在りませんでした。
美しいドレスに身を包んでいたのです。
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