記念もの
□依存宣言
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「…………最低だ」
「君が言ったんだろう」
「サディスト。色魔っ」
散々いいようにされた私は、すっかり力を失って、座敷に転がっていた。
「折角望みどおり優しくしてやったのに、我儘な」
「どこがっ!」
京極堂の方は着流しをきちんと着て、煙草をふかしていた。
精一杯に睨んでやったが、全く効果がない。
「これで今日の分はチャラにしてやろう」
「…………鬼」
「毎度連れ戻す僕の身にもなれ、と言ったはずだぜ」
「なら、連れ戻さなきゃいいだろう」
私は布団に顔をうずめた。
何となく、まだ紅い顔を見られたくなかったからだ。
「そうはいかない」
「どうして」
「君には僕がいなくちゃいけないように、僕にも君は必要なのさ」
布団に顔を押し付けておいて、本当によかった。
頬に熱が集まるのが感じられる。
「………ありがとう」
「礼なんかいいぜ。言っただろ?『今日の分の借りはチャラだ』と」
―――――最低だ。
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