記念もの
□依存宣言
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「高校のときより、引き戻し方が乱暴だよ。あれじゃ罵声じゃないか」
「何だ。君はそんなところにまで文句を言うのか。
もうすこし優しくしろ、と言っているのか?それは」
「優しくされる、というのも何だかぞっとしないね」
想像して、私は苦笑する。
そんな様子を見て、京極堂は手元の和綴じを閉じ、私のほうへ向き直る。
「王子様の接吻で目覚めさせろ、と?最近君は西洋かぶれが過ぎるぜ、関口センセイ」
「だっ、誰が!そんなこと言ってないじゃないかっ」
全く、とんでもないことを言う。
確かに西洋の童話などではありがちなパターンだが、そんなことをしろと言った覚えはない。
大体、ちょっとした冗談に他ならなかったのだ。
私は真っ赤になって弁解するが、次第にしどろもどろになって、終いには言葉かどうかも怪しいことをもごもごと口走った。
京極堂はニヤリと口角を上げて、
「まぁお望みとあらば、だね。
関口君にしては、意外といい意見だ」
と言い放った。
私は益々失語して、あ、とかう、とか言いながら、にじり寄る京極堂から逃げるべく後ずさる。
「…きょ、きょうごくどっ」
「静かにしたまえよ、ロマンチストの関口先生」
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