勿忘草を君に

GAME.04
6ページ/7ページ



「碧依、平気か?」

「大丈夫よ。薫も自分でやった怪我だから、たいしたことはないわ」


念のために病院に行くように伝えたと言う碧依に、手塚はそうじゃないと静止をかける。


「俺はお前の心配をしているんだが?」

「私の?ふふっ……ほんと、国光には隠し事なんてできないわね」


そう呟いた碧依の表情は、悲しみとも苦しみともとれる、切ないものだった。


「不慮の事故でテニスを諦める人間だっているのに、なんであんな事……」

「あんな碧依を見たんだ。海堂だって反省してるだろう」

「そうだといいけど」


大丈夫だと言うように、そっと頭に置かれた手の重みに安心したのか、碧依はふっと表情を緩めて手塚に寄り添う。

日も傾き始めた夕暮れの道を、明日以降の試合に思いを馳せながら、ゆっくりと歩く二つの影が長く伸びていた。


次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ