勿忘草を君に
□GAME.04
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「碧依、平気か?」
「大丈夫よ。薫も自分でやった怪我だから、たいしたことはないわ」
念のために病院に行くように伝えたと言う碧依に、手塚はそうじゃないと静止をかける。
「俺はお前の心配をしているんだが?」
「私の?ふふっ……ほんと、国光には隠し事なんてできないわね」
そう呟いた碧依の表情は、悲しみとも苦しみともとれる、切ないものだった。
「不慮の事故でテニスを諦める人間だっているのに、なんであんな事……」
「あんな碧依を見たんだ。海堂だって反省してるだろう」
「そうだといいけど」
大丈夫だと言うように、そっと頭に置かれた手の重みに安心したのか、碧依はふっと表情を緩めて手塚に寄り添う。
日も傾き始めた夕暮れの道を、明日以降の試合に思いを馳せながら、ゆっくりと歩く二つの影が長く伸びていた。