勿忘草を君に
□GAME.04
4ページ/7ページ
「薫」
レギュラーの座は諦めないと、乾に宣言した海堂を、普段からは想像もつかないくらい冷たい声が呼び止めた。
「碧依先ぱ……っ!?」
不思議に思った海堂の言葉を遮ったのは、乾いた破裂音だった。
「な、何するんスか!?」
「貴方こそ何してるの?」
いきなり頬を叩かれたにもかかわらず、海堂は碧依に詰め寄るどころか、逆にその静かな声音に唾を飲み込んだ。
「ラケットは人を傷つけるための道具じゃないわ。ましてや自分を傷つけて……一生テニスができなくなってもいいの?」
静かに淡々と、しかし真剣に語られる碧依の言葉に、海堂は口を開く事すらできない。
大げさだと思いながらも、反論など許される空気ではなかった。