fragment

文章にならなかった散文たち。
◆豪雨 

蛙が鳴く。
雨音はたえまなく葉をたたく。

「傘の中だと、いい声に聞こえるんですよ」

ふたりで肩を並べた傘の中で骸がしゃべり始めた。

「声がね、反射するんです。そして、一番心地いい声で相手の耳に届くんですって」

「…」

雨音は相変わらず強い。

「騒音にかき消されず、周りの人の声も気にならない。いわば音響の整った半個室といったところでしょうか」

クフフと笑う声も雨と一緒に頭の上からやわらかく降ってくる。

「そうだね、」

「じゃあ、」

自分の右隣を歩く骸の視線を捕まえて言う。

「僕の声は君に届いてるの」

骸は赤と青の瞳でこちらを見つめかえして、うれしそうに笑う。

「もちろん」


「そう」

声だけじゃないんだけどね。


その言葉は雨にかき消された。


end
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豪雨ですね。
みなさまお気をつけて。

そして、あと、2日。

2014/06/07(Sat) 00:49 

◆赤いバラと、 

今日も届いた。

バラが2本。
「またか」
あきれる。
何度も同じものを贈ってくるなんて。

1本は赤。
もう1本は見えない。
ただ、見当はついている。
骸が贈ってくるものはだいたいこれに当てはまる。
「青か…」
いつものように2本を並べてグラスにさす。

前回贈られてきた赤いバラが少しくすんで見えるが、まだ枯れる気配はない。

不思議なことに、枯れるのはいつも必ず赤ではないバラのほうからだった。
褪せて、花びらがちぢれ、気づけば灰のようなさらさらとしたものが執務机の上に散らばっていく。

対照的に赤いバラはいつまでも柔らかく、鮮やかだ。

骸の意図は見当がつかない。

増え続ける赤いバラを背に、雲雀は今日も大きなテーブルに広げられた地図にペンを走らせた。

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「色と世界」の少し前のお話。

まだ設定がとっ散らかっています。

2014/05/18(Sun) 01:06 

◆おふろですよ 

※綱吉と雲雀には何もありませえん.
2人は攻めです.
4歳児くらいの骸のパパです.

それでもいい方はれっつごー.






「目をつぶって.耳押さえて.はい,いきとめて」
「ん!」
手桶にためていたお湯を少しずつ流して,小さい骸の頭をすすぐ.
「はい,もういいよー」
「ぷはー,ありがとうございます.つなよし」
「どういたしまして.むくろも頭洗うの,上手になったなぁ」
湯船に入りながら綱吉は骸の頬をつつく.
「そうですか?ぼくもおとなです!」
くふふと笑って骸は数字を数えはじめた.
「じゃあ20まで数えてあがろう」
「じゅうーご,じゅうーろくー…」
こくりとうなずいて数え続ける骸.
綱吉は膝の上に骸をのせて,柔らかな肩を撫でながら湯をかける.
「じゅうーく,にーじゅう!」
綱吉の膝の上でざばっとたちあがると,骸は綱吉に向かってばんざいをした.
「あついです!あがります!」
「はいはい.ちょっと待ってねー」
綱吉は湯船につかったまま,片手で浴室のドアを開けた.
「雲雀さーん.骸が上がりますよー」
リビングからぱたぱたとゆっくりあ足音がして,雲雀がやってきた.
「はいはい.ほら,」

雲雀は骸用に用意したオーガニックコットンのバスタオルを両手いっぱいに広げて浴室の前にしゃがみこむ.
「きょうや!まってましたー」
にこーっと笑うと,綱吉に抱きかかえられて湯船から出ると,そのまま雲雀の腕の中へダイブした.
「こら,毎回同じこと言わせない.ドンドンしたら下の階の人の迷惑だろう」
「だって,きょうやがひろげてるのみると,わくわくするんです…」
わしわしと頭をふかれながら,骸は口をとがらせる.
「雲雀さんの言う通りだよ.次からはダイブ禁止ー」
綱吉は自分も頭をふきながら骸を諭す.
「ちがうよ.馬鹿じゃないの綱吉.僕が言いたいのはそういうことじゃない」
ぎろりと冷たい目線で一瞥(いちべつ)すると,目の前の骸に目線を合わせて静かに熱く語る.
「いいかい.音が立たないようにダイブする技術を身につけなってことだよ」
「おおー」
「雲雀さん…」
骸はきらきらした目で雲雀を見つめ,綱吉は呆れたように2人を見下ろす.
「楽しみを我慢しなくてもいい方法を自分で考えな.それが大人だよ」
ふん,といつもの顔に戻って骸の体を拭き始めた.
「きょうや!ぼくもっとおとなになります!」

最凶の教育方針に対抗すべく,綱吉はタオル一枚のままの姿で考えこむ.

『うん...このままじゃ駄目だ.新しい教育プランを作ろう』



end





お風呂!!
ついったでぷちむをフォローしておりまして...
うっかり暴走しました.

2013/02/19(Tue) 22:54 

◆夕空 

空が滲む.
青,藍,紫.

同じような空を見たあの日.
とてもきれいだと思った.

移ろいゆく季節.

霧のように消えた君の姿は,つかめないままだ.

僕に何も言わずに,何をしてるの.
どこへいったの.

友人じゃない.
家族でもない.

なんの関係もない.

君がいなくなれば,終わる関係.

物も,形も残らない.
僕たちを表すものは,互いの存在だけ.

夕日が闇にとけていく.
なにもかもが,変わらないまままた明日が来る.

君が好きな僕も変わらないまま.



end.

2012/09/29(Sat) 14:26 

◆after epi / 9669 

いつものように、狭い浴室から上がって、鏡の前に立つ。
あれから1年がたとうとしていた。

「この体にも…慣れましたね、」

長く伸びた前髪をかきあげると、しずくが顔を伝う。
「っ…」
一瞬視界に赤いまだら模様が映って、顔を押さえた。
洗面台に垂れた水たまりに、フラッシュバックする血だまり。

「あのころとは、ちがう…」

肩から掛けたタオルで顔を拭う。

短くなった襟足、伸びた前髪。
低くなった声、高くなった視界。

確かめるように自分の体に手を滑らす。
しっかりした骨格をたどり、腰から下肢へ降りたところで手が止まった。

あるはずのなかった、男性器。

クロームにとってこれは、排泄のためのものではない。

ただ、骸のためだけのもの。

深く、浅く。長く、強く。打ち付けるように、刻み込むように。
自分以外を見ることができないように。
それだけのために作られた性器。

「はぁ…、骸さま…」

思い出すだけで昂る。
自分の世界で、自分の血に染まった骸。

あれから何度となく骸を犯した。
交わした口づけなど、数えられないほどだ。

それでもまだ、満たされない。
身も心も、溶けてぐずぐずになってしまいたい。

クロームは果てしない欲望を抱えたまま、今日も寝室へ向かった。

2012/07/23(Mon) 23:55 

◆Buon Compleanno!! 

ポーンと軽い音がして、音もなく上昇して行く。
エレベーターには2人だけ。

「日が落ちましたね」
「うん」

外に向いてガラス張りになったエレベーターからは、上昇するにつれて街の夜景が広がっていく。

「部屋、25階で…」

ふと、自分の背後に影がさす。

「恭弥、」

夜景を散りばめたガラスに、自分たちのシルエットが重なって映り込んだ。
ポーン、と再び音がしてエレベーターが自分たちの部屋のある階につく。

ドアが開いた。

骸が反射的にドアの方を向くと、目の前に自分を見つめている雲雀と目が合う。

『10年たって、身長差が縮まると思ってたよ』

確か、この前そんな事を話していたっけ。
雲雀の黒い瞳が少しだけ揺れる。

音もなくドアが閉まる。
と、同じくして雲雀が動いた。

「むくろ、」

唇が重なる。
触れた唇から、つぶやかれた自分の名前が振動になって伝わる。

「ふ…う、んん、っ…」
骸より少し低いことろから角度を変えて、熱をのせて、薄い唇からは声にならない想いが絡む。
いつ、誰が乗り込んでくるともしれないエレベーターの中で、くちづけはどうしようもなく昂ぶっていく。

「き、ょ…う…。っぁ…」
ふと、開いた目に夜景ではなく、ガラス越しの自分たちの姿が映る。
まだ、外では何百、何千という人たちが働いている、動いている。

それを見下ろしながら、まるで別次元のような甘い時間が流れる。
まるで、エレベーターが上空25階で浮遊しているような錯覚に陥った。

「ん、っは…。このまま、浮き上がりそう…、ですね…」
「む、くろ…」

ようやく音になった雲雀の声が骸の名前を呼んで、2人の間の唾液を切った。
ぺろりと骸が雲雀の下唇を舐め上げて、挑発的に微笑えんだ。

「はぁ…。っ、ここ、エレベーターですよ?」
「別に、いいんじゃない。予約したの僕なんだから好きにさせてよ。ほら、」

そう言って、雲雀はくちづけの続きを要求する。

「このままだと…今夜、寝れそうにないんだけど?」
「どうせ、僕を寝せる気も無いんでしょう…」

ため息をつくと、2人のもたれたガラスがくもる。
雲雀は一瞬の曇りに隠れるようにして、骸の舌を奪った。

「まあ、今はこれで見逃してあげる」

今夜はまだ長いと言外に言いつつ、雲雀は骸の指を掴んで、開ボタンを押した。




End

2012/06/09(Sat) 00:42 

◆キリトリ、ハリツケ。 


床にはりつけられる。
いや、正確には覆いかぶさられているだけ。

でも、動けない。

「きれいですね。そうやってすこし揺れる瞳。ビー玉、いや、キャンディみたいで」

僕の頭の横に肘をついて、顔にかかった髪を撫でるように払う。

「なめたい、」

熱い息が眼球に触れ、思わず目を閉じる。

「ああ、こっちも」

そういうと、もう片方の手に握られたものがシャキっと動く音が聞こえた。

「もう夏も近いというのに、真っ白ですね。骸様」

大ぶりの裁ち鋏がTシャツをひっかけてまくりあげている。

彼は器用に鋏を揺らすと、少しずつ、味わうように力を入れる。

「っあ…!」

時折、わざとあてられる刃の冷たさにびくりと身がすくむ。

「おや、その様に動いては、うつくしいお腹に刃が刺さってしまいます。僕が持っているこれには、背なんてありませんから」

「え…」

不穏な言葉に目を開けて、自分の腹の方へ視線を落とした。

彼はTシャツをひっかけたままの鋏を見せつけるように高く持ち上げると、勢い良く力を入れて布を断ち切った。

ジャキッと音がして、切れ込みの入ったTシャツが骸の腹へ落ちる。
そして、持ち上げたままの鋏の全体があらわになった。

「クローム…」

普通なら外側に向けて、刃の背があるはずの鋏。
切れるのは、内側に向いた刃だけのはずの鋏。

それが。

「きれいでしょう?切れ味、抜群」

それに、と加えて自分の口元に鋏を寄せ、鋭く光を放つ背の部分の刃を舐めあげた。

「血も、きれいにはじくんです」

舐めたことでクロームの舌が切れ、鮮血が滴る。

「う、あ…、」

鋏にはいく筋かの血が流れるが、刃にまとわりつくことなくすぐにつるりとした金属がのぞく。

クロームの舌からは次々と大ぶりの血のしずくが落ちる。

「これをしみこませていいのは、骸様の肌だけですから」


クロームは骸の腹にできた血溜まりに、傷口が開いたままの舌をのせた。

「っ!クローム…!」

ふわりとした骸の素肌と、まだ温かいクロームの血が舌の上で混ざる。
咥内からあふれ出した唾液も絡んで、真っ白だった骸の腹の上が、内臓を取り出したかような光景になった。

「僕の、匂い。ちゃんととれないようにつけてあげますからね。もっと…」

うっとりと血に濡れた手で、骸の頬を撫でた。
クロームの細い指がなぞった後に、まるで所有印のような赤い筋が刻まれた。












ぐろちゅうい。
いまさら。
ちょっと昨日まで遠征しておりました。
精神的にフルボッコにされたので、骸さんも精神的ダメージを受けていただきました。
み ち づ れ 。

2012/06/03(Sun) 19:13 

◆his mustache. 

「ただいま」
「あ、おかえり」

狭いアトリエにいた彼が振り向いた。
手には細い絵筆が握られている。

「もう少し待って。夕食の準備はしてあるから、手を、洗っ、て…」

そこまで言いかけた唇が止まる。

「ん、っちょっと。むくろ、」

床に座り込んでいる雲雀を正面にとらえると、骸は雲雀の頬に手をかけ、顎のあたりを舐めた。

さらさらとした肌にはえる無精髭が、骸の舌で梳かされる。

猫のように細い舌で、雲雀の右頬から丁寧に舐めていく。
うっとりと唇を寄せて、頬の肉をはみ、舌で骨格をなぞる。
皮膚の薄い唇は指でふれるよりも、そのまばらにはえた髭の存在をとらえて、快感へとつないでいく。
ちゅっ、とキスよりも控えめな音が骸の息使いにまぎれる。

「骸、」

雲雀がどんな言葉を発しようと、骸の耳には受け入れられることはない。
あきらめた雲雀もされるがままに目を閉じた。

日がなアトリエにこもり、人に会うこともない彼は、身なりに無頓着だ。
肌触りのよい着流しに、ゆるく帯を巻きつけて、少しだけ伸びた後ろ髪を表具飾の紐でくくっている。
骸はそのどれもが好きだが、体つきも容姿も整いすぎた雲雀について、その美しさは当たり前のようなものだ。
そんな彼にはえる髭とは、美しい彼の顔と彼のまとう緻密なバランスを保った雰囲気を崩し、汚すもの。

しかし、骸にとってはなによりも性的興奮を覚えるものだった。

「っは…。昨日から、剃ってないんですか?」

半ば息を切らせながら、骸は一通り舐め終えた雲雀の顎に仕上げとばかりにキスをする。
骸の頬は紅潮し、薄かった唇は自分の唾液に浸されて赤く艶めく。

「ん。調子が出たから。ずっと描いてた」

雲雀は、薄められた墨汁と赤と青の塗料がのった白磁に視線を向けた。

「ふうん。だから、赤がついてたんですか」

今頃気づいたと、骸も同じ方へ視線を向けた。

「だから?」
「頬の、ここに赤いのがついてました」

今は跡形もなく消えた雲雀の右頬に指を当てて、またキスをする。

「あ、そ。で、いつまでそうしてるつもりなの」

雲雀は仕返しとばかりに、骸の細身のネクタイを持ったままの絵筆の頭でひっかけて一気に引き抜いた。

「そうですね。おなかがすきました。とても、君のおいしい手料理が食べたいですね」

そういうと、骸は雲雀の髪に触れ、飾り紐をといた。

「じゃあ、異論なしってことで」

雲雀は絵筆を筆皿に転がすと、ゆるんだ骸のシャツの襟元を引っ張り首筋に顔を埋めた。

アトリエに広げられた真っ白な和紙には、まだ濡れたままのみずみずしい蓮の花が咲いていた。











水墨画家雲雀さん(30↑)×スーツでお仕事する職業の骸さん(30前後)

襲い受けというのか。
変態受け、というのか。
昼間、髭がーってついっとを数人がしてて、ほう!ってなった。
そしてこうなった。

美しい男性の毛って、ひどく淫猥。
そそられます。
色白な人のすね毛とか、わき毛とか。
そして、無精ひげ、というより、生えかけの薄く、散らばった感じ。
夢に見そう。

2012/05/19(Sat) 21:22 

◆perfume. 


骸はもう出かけて行った。

『…まだ7時か…』
雲雀はゆっくりと、手元に引っかかった布を抱く。



早朝。
いつもより早く目覚ましがなった。
「もう、そんなじかん…?」
文句半分につぶやいて、隣の骸を手探りでたぐり寄せた。
「今日は撮影が朝早くからあるんです。お先に失礼しますよ」
するりと暖かい重みがなくなった。
「…そう…」
うとうととまどろんで、雲雀はそのまま朝方の夢に沈んだ。



ピピピピ…

7時半。
今度は自分の携帯のアラームがなり始めた。
「ヒバード…。それ、けして、」
賢いペットは器用に携帯のセンターボタンをつつくと、アラームを止めて雲雀の枕元へとまった。
ヒバードはしばらく首をかしげて眺めたあと、おもむろに雲雀の腕の中に潜り込んできた。
「ん…?」
数時間前まで骸が居たそこで、ヒバードがしきりに布にくるまろうとしている。
「あ、これか…」
ヒバードがじゃれていたのは、骸が昨夜きていた浴衣。
どうやら、今朝起きた時の骸の抜け殻らしい。

「ヒバード、こら」
骸のつける香水なのか、それとも体臭なのか。
ヒバードは決まって骸の服にうもれたがった。
骸と一緒に住み始めてからついたヒバードの新たな癖に、雲雀は今も手を焼いている。
「君はこっち」
ヒバードをつまみ出してベッドの反対側に放り投げると、雲雀はようやく体を起こした。
夜半にひっかけた自分の浴衣が自分のものではない帯を絡めている。
「…」
骸の浴衣がしっかりと雲雀の腕に抱き込まれているところをみると、骸はだいぶ自分の腕から抜け出すのに苦労したらしい。
「まるで空蝉、か。ずいぶん刺激的なことするじゃない…」
雲雀は骸の浴衣を抱え上げると、そこに顔を埋めて深呼吸をした。

シャンプー、ヘアオイル、ボディクリーム。
そして、かすかに混じる、それらだけではないかおり。

肺にはさわやかに甘く、下半身にはいささか刺激的な匂いにめまいがする。

「僕も、だいぶ焼きが回ったな」

つぶやいて、雲雀は再びベッドへ沈み込んだ。


End.







匂いネタ。
別所で頂いてからずーっと、書きたくて書きたくて、でもうまくいかなくて放置してたもの。
イメージは+10の2人が同棲してたらこうなるだろうというアバウトなもの。
何気に昨日の雲雀誕のものと同じ設定です。
昨日の雲雀誕も自分設定では+10です。
そして、もう一つリンクしているものが。。。

それは追ってご報告します。

2012/05/06(Sun) 22:25 

◆Birth Day 

今日は快晴。
気温は26度。
ベランダには、洋服と一緒に薄いブルーと紫のシーツがたなびいている。

「恭弥、お洗濯終わりましたよ」
「ありがと。こっちもだいたい片付いた」

キッチンに新しいグラスと食器が並ぶ。
洗いざらしのクロスにキラリと雫が滴る。

「桜の形のグラスなんて、よく見つけてきたね」
「きれいでしょう?ピンクもあったんですけど、ちょっとシーズンが過ぎてしまったのもあってクリアにしました」

上から覗くと、きれいな桜の花がかたどられているのがわかる。

「お誕生日プレゼントにしては、しょうもないかもしれませんが」

骸は、キッチンのカウンターをはさんで向かい合った雲雀の額にキスをした。

「お誕生日おめでとうございます」
 
相変わらず縮まらない身長差。
この1年で、それすらも愛しい関係になった。

「ありがと。しょうもないプレゼントってことは、ちゃんと別のものをくれるんでしょ?」

雲雀はそういいながら伏せてあるグラスを返して、チョコレートソーダを注いだ。

「そうきますか。いいでしょう。お誕生日様ですからね」

クフフ、と笑ってチョコレートソーダを口に含む。
爽やかな甘さと刺激が喉を潤す。

「洗濯物の中に浴衣出してあったでしょ。今夜はあれ着て」

グラスを唇に当ててにやりと笑う雲雀。
骸は振り返ってさっき干したベランダの洗濯物を見た。

「恭弥…。最初からそのつもりだったんでしょう」
「さあ、どうだろうね。でも、いい年した大人がこれで満足なんてすると思う?」

そう言って、自分が手にしたグラスを傾けた。
グラスの汗がポタリと骸の手に落ちて、ゆっくりと白い肌をつたって垂れる。

「なら、恭弥もそれなりに頑張ってくれるんでしょうね?」
「もちろん。明日出掛けられないようにしてあげるよ」

骸は返事の代わりにグラスを重ねた。
カチンと、昼下がりのリビングに涼しげな音が響く。
グラスの炭酸がはじけて、チョコレートの香りが広がった。




end.







雲雀さんまじお誕生日様。
付き合って1年もすれば、お互いのあれこれいいところ知って、話の展開も読めるくらいにはなって、それでもなお、お互いが大好きで、でも出し抜いて驚いた顔をさせたくてたまらない好戦的なふたり。

今夜はニャンニャンもいつもより…!

2012/05/05(Sat) 23:09 

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