school

□4月
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―入学式前日

 入学式を明日に控えて、朝から構内には、心なしかお祭りムードが漂っていた。先月には何も咲いていなかった校門近くのプランターには、きれいに手入れをされて花の盛りを迎えたスイートピーが行儀よく並んでいる。

新入生よりも一日早く始まった新学期に、ゆるい倦怠感を抱えつつオリエンテーションの教室へ向かう綱吉。
メッセンジャーバッグを肩から下げ、手には新しいカリキュラム表を持っている。ただ、もうひとついつもと違うのは、隣にいるはずの2人がいないこと。
獄寺はさっきまでは一緒にいたのだが、今期の授業で使う参考書を買いに行くと一足早く学校を出ていった。山本はと言えば、その人当たりの良さを買われて、明日からの新入生歓迎会のスタッフとして準備に追われている。
そして彼も。
綱吉のいる3階の廊下の窓からは明日の歓迎会の会場になる第T講堂が見える。先にオリエンテーションを終えた学生がちらほらと会場準備をしているのが伺えた。
――あ、いた…
 綱吉の目線の先にいるのは、茶色いバインダーを持って、隣に立っている男子に指示を出している青年。桜色の薄手のセーターにきれいな深い青の長い髪がかかっている。
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