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□1月
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――1月

「寒いと思ったら、雪ですね」
校門へ続く道を二人で歩きながら空を見上げると、初雪が降ってくる。
「積もりそうだね…早く帰ろう」
「はい。あ、」
ふわりと骸の香りがしたと思うと、首元が暖かくなる。
「ん…?」
自分が巻いていたマフラーを雲雀に巻くと、片側だけリュックの肩を外し、骸は別の青いマフラーを取りだして自分に巻いた。
「わざわざ持って来てたの?」
「え……、まぁ…あなたがテーブルの上に置きっぱなしにして行ってたので……」
今朝は自分より早く家を出た雲雀のマフラーがリビングにあるのに気づき持ってきていたのだ。
「この忙しい時期に風邪なんか引かれたら困りますから」
大学に入ってから自分と同じくらいの身長になった雲雀に照れ隠しをするのは、あまり上手くいかない。
「顔赤いね。骸こそ熱でもあるんじゃない?」
そう言って骸の左頬に雲雀の手の甲が当てられ、そのまますっと耳たぶをつまむ。もう片方の手はいつの間にか、マフラーの下に潜り込み、隠れた鎖骨の辺りの温もりを確かめるようにさわさわとなでている。
「ちょっ…あ…!ここを何処だと思ってるんですか!」
「ん―熱あるんじゃない?今日はもう帰ろうか」
弱いところを冷たい指先でふにふにとつままれ声をあげる骸に、もっともらしい顔をして勝手に話をする雲雀。
「…っ、今日は物件を見に行くんでしょう!店に予約までしてるんですから!行きますよっ!」
そう言って、骸はいたずらな雲雀の手をはたき落とし、逃げるように歩き出す。
「はいはい」
にやけ顔を押さえられないまま、雲雀は骸が巻いてくれたマフラーを巻き直すと骸の背をゆっくりと追いかけた。

今年が始まって10日が経つ。
今年は昨年よりもっと愛しい人と過ごせることに期待を膨らませながら、二人は新しい生活の始まるであろう新居を探しにでかけた。

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