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□君と僕の爪の距離
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パタン。

「ふ―…」

ぱさぱさと黒い短髪から水滴とシャンプーの香りが散らばる。
汗をかくからと、いつもならシャワーで済ませていた風呂に久しぶりに湯をはった。
まだ昼間は残暑が厳しいが、夜になるとすっと気温が落ちてくしゃみをし出す雲雀のために骸が気を回したのだ。
「あ、なにか飲みますか?」
一足先に風呂に入った骸は緩いジャージ姿でソファからふりかえる。
「うん」
空になった自分のグラスを持って立ち上がるとキッチンへ向かい、新しいグラスにジンジャーエールを注ぐ。
「氷は?」
「ん―、暑いから入れといて」
カランカランと涼しげな音がソファの雲雀に届く。
「ジンジャーエールです」
「ありがと」
戦いには到底向かなそうな、柳のような手から差し出されたたグラスを受け取るために、雲雀も風呂上がりでほんのり赤く染まった手を出した。
するとぴたりと骸の視線が雲雀の手に止まる。
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