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□天地人パロ
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―――時は戦乱

名武将、上杉謙信は世に出ているものとは別に、もうひとつの顔を持つ。
その名は、ジョット。

数々の宿敵を倒しその名を歴史に刻んだその男には、彼を支える有能な臣下が数多くいたという。
中でもとりわけ彼に目をかけられていた者がいた。そしてその臣下の名にも二つの顔があった。
表の名を樋口兼継。
裏の名を六道骸。
若くしてジョットに仕えるようになった骸は、その切れる頭から両方の世界ですぐに有名なった。
「お呼びでしょうか、親方様」
座敷の手前の廊下に膝をつき礼をとる。
ジョットの部屋には小さなろうそくの明かりがゆらりと輪を描いている。どうやら二間続きの座敷の奥で、窓の外に咲く桜を眺めながら盃を傾けているようだ。奥の部屋の手前には御簾がかかっているため、こちらからは肩を滑る色素の薄い髪に隠れた左の横顔しか見えない。
「あぁ、夜中に悪いね」
「いえ」
「人払いは…」
「しております」
「…流石だな」
ふっと笑うような息づかいと、酒のはねる音がする。雰囲気話味わうような静寂が流れる。
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