main

□汗と汗と、
1ページ/7ページ

絶対にコイツは変態だと思う。

「な―獄寺―、今日ひま?」
「?別になんもねーけど」
「じゃあさ、ちょっと付き合ってくんね?」

社員食堂で昼飯をすませた後、屋上で一服している俺の横に座って、山本はそう言った。
今夜は特に予定もないし、いいかと思ったら、それが間違いだった。



「はっ…はっ…っは…」
「お前さぁ、本当に体力ないのな―。こんくらいで息上がるとか」
「はっ…うるせぇ!…お前が、体力、バカなんだよっ…は…!」
笑いながら俺の横で、涼しい顔でジョギングマシーンを走り続ける山本。マジムカつく。
付き合えって言うからどこにいくのかと思えば、ジムかよ。俺がこういうのは嫌いだって知っててやるからたちが悪い。でも、だからって負けたくはない。ただでさえ、いろんなことで、コイツには一枚上をいかれているのに。
だが残念なことに、既に俺の体力は限界を越してして息が苦しい。
ヤバイな…。また負けるかも…。
と思った瞬間、
「は――……走った!走った!」
お、終わった…!
山本はマシーンの液晶に出た走行距離を確かめてから、汗をぬぐう。
勝った気はしないが、負けてもいない。
とりあえずはよしとしよう!
一人で納得しながら、俺もジョギングマシーンを止めて水を被ったような汗を拭う。
「じゃ風呂いくか、隼人」
「は…、あぁ」
ここはジムと温泉施設が併設してある所で、ほとんどの利用者がジムでかいた汗を風呂に入って流していく。
それは俺たちも例外ではなく、俺はそれが気に入っていた。
特にここのサウナは清潔で温度も湿度も完璧。そして他のサウナと違うのは、ちょっと温度が低いこと。普通のサウナより呼吸がしやすい。そんなこんなで最近のお気に入りサウナの一つだ。
風呂に行くと閉館時間が近いためか、それとも平日だからか人はほとんどいない。まぁ普通はそうだろう。仕事で疲労困憊な上に、わざわざジムによって体を痛めつけて帰るアホは山本しかいない。
体を洗い終えると山本が俺に声をかける。
「隼人、今日はめっちゃ頑張ってたなー。なんかあったんか?」
半分茶化しながら聞いてくる山本。
まさか、「お前に負けたくないから!」とか子供っぽい理由を言えるはずもない。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ