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□Tシャツって、
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骸と雲雀はいつものように応接室にいた。
デスクで黙々と書類に目を通していく雲雀の周りで、床に散らばた書類の片づけをしている。
世の学校はみな夏休み真っ只中であろう8月。
並盛中も例外ではなく、校舎内にいるのはこの二人だけだ。
最初は1学期中の残務整理に追われていた雲雀を邪魔しにきた骸だったが、応接室のあまりの惨状に、うっかり整理好きの心をほだされてしまい、今に至る。
「…ねぇ。君なんでそんなの着てるの」
雲雀はふと、やや充血した眼を向け、骸に尋ねる。
「は?暑いからに決まってるじゃないですか。この暑さに脳みそまで溶けましたか?アヒルさん」
怪訝な目を向けながら答える骸は、スカイブルーと白の太めのボーダーTシャツに黒くてスリムなデニムを着ている。髪型は相変わらず、お気に入りのフルアップ。
一見おかしいところはない。パイナポーな髪形をのぞいては。
「相変わらずだね、パイナップル。僕はそういう意味で言ったんじゃないよ」
「すいませんが、アヒルさんの思考回路なんて理解できませんので」
「あっそう。頭は飾り物か。忘れてたよ。ならこっちに聞こうかな」
そう言うが早いか、雲雀は骸の背後に立つと、Tシャツの襟首を下に引っ張った。
「っっく!なんですか。いきなり後ろから…。苦しいんですけど!ついでにTシャツ引っ張らないでくれます?襟引っ張ったらのびるじゃないですか」
手にいっぱいの書類の束を抱えた骸は動けずに非難の声を上げるが、一向に雲雀の手が離される気配はない。
それどころか、なんだか視線を感じる。首のあたりに。
「…。最悪だよ…」
「はぁ?勝手に人の後ろ襟引っ張っておいて。横暴にも程が……ひゃっ!」
普段は黒曜中の制服なので学ランを着ている骸。下にタンクトップを着ているので、夏場でも学ランを脱ぐことは滅多にない。
そんな骸がTシャツを着ている。
いつもは見えない首のラインが惜しげもなくさらけ出されている。
それだけでも雲雀にとっては目の毒なのに、自分がTシャツを引っ張っていることによって、首から方のラインまでがあらわになっている。
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