school

□2月・3月
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たとえゲームでも、雲雀に負けることは骸にとって非常に屈辱なのだ。そんな骸を知ってか知らずか、雲雀は骸が銜えている方と反対側のToppoを一気に半分まで食べる。そしてちょうどその位置でToppoをつまんでいた骸の指までぱっくりと雲雀の口の中におさまってしまった。まさか指をなめられるとは思っていなかった骸は思わず目を開けてしまう。
「ひょっ!」
「ああ、骸の指細いからToppoと間違えた」
「むっ!はにゃひへっ…ふらはひ…!」
「んー?何言ってるか分からないな」
分かってるくせに気付かないふりしたまま、雲雀はTopoを銜えている骸に口づけてくる。
雲雀の舌は器用にToppoを加えた骸の口の隙間から中へ入り込み、それを奪うように咥内を舐めつくしていく。雲雀の口づけによって既に骸の口の端からは飲み込み切れなかった唾液が細い線を描きながら垂れていく。どちらのものか分からない唾液を吸って、Toppoの堅いクッキー生地がふにゃふにゃになり、中に入っていたピーチフレーバーのチョコレートが二人の口の中で一気に溶け出す。
「んんっ・・・ふっ・・・ン、む…」
口を離せば、二人の体温で温められたピーチとチョコレートの混ざった甘ったるい香りが部屋中に広がっていく。さっきまで口の中に入っていたToppoを見事に口づけとともに雲雀に持っていかれた骸は、自由になった口で不満をこぼす。
「っは…僕には…食べさせないつもりですか?」
「だって骸はバレンタインくれなかったじゃない。」
「それが何の関係があるって言うんですか」
「今日が何の日だか知らないの?骸は」
「今日は…14日…」
壁にかかっているカレンダーに目をやるとそこに書かれていたのは。
「ホワイトデー…」
「そういうこと。君は何もくれなかったよね?だから今日は僕の好きにさせてもらおうと思って」
「バレンタインを忘れていたことはすみません。だからってなんであなたの好きにされなくちゃいけないんですか!それに一本くらい食べさせてくれたって…」
「バレンタイン。…結構傷ついたんだけど」
「あ…」
2月14日と言えば引っ越してきてまだ1週間の頃。部屋の片づけは勿論、インターネットの開設やご近所へのあいさつ回りなどとても忙しかった時期だ。
本当は骸も忘れていたわけではなかったが、何しろキッチンもひどい散らかり具合で何かプレゼントしようなどと考える暇も頭の余裕もなかった。そしてきっと雲雀もわかってくれるだろうと思いこんでいたのだ。
が、どうやら違ったらしい。雲雀がこんなに感情を見せることはまずない。
目の前の雲雀はちょっと拗ねたように眼を伏せてさっきあけたToppoの袋をいじっている。
「すみません。気付かなくて。あなたがそんな風に思ってるなんて」
「……」
自分にしか見せない幼い表情に骸はほほ笑む。そしてソファを下りると、雲雀の真正面にぺたりと腰を下ろし雲雀の顔を下からのぞきこむ。
「今からじゃ、遅いですか?」
「…別、んっ・・・」
骸は両手で雲雀の頬を包み込むと自分から口づける。いつもの自分なら絶対にこんなことはしないが、今回の事は自分にも非があると、骸は申し訳なさを伝えるように深く深くキスを続ける。ぴったりと、少しの隙間もなく唇をふれ合わせ、さっきはToppoに邪魔されて触れられなかった互いの舌を絡めあう。ゆっくりと雲雀の手が骸の後頭部にまわされ、さらさらと髪をすく。最初は骸が持っていたはずの主導権はいつの間にか雲雀に取って代わられ、ゆるやかに骸の息が上がっていく。
「っふ…少しは、許してくれました?」
骸は口の端を伝う唾液を拭うと、少し潤んだ目で雲雀を見上げる。雲雀はその視線を受けて、ばつが悪そうにちょっと笑うと骸の耳元でつぶやく。
「まだ…足りない…」
すると骸は雲雀の手に握られたままの袋からToppoを一本取り出し、口に銜えて雲雀に反対側を差し出す。握られたままで温かくなったToppoの端からは溶けたチョコレートが顔を出し、骸の腕にぽたりと垂れる。すると雲雀は骸が銜えているものではなく、骸の腕を取り、垂れたチョコレートを丁寧に舐めとる。
「ふっ…あ…」
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