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(やぶてん風)ブレイク組2
「キーキー煩い猿かと思っていたが…アイツはなんだ?ゴリラか?」
「否定はしない」
雷門中のグラウンドにて。
一体どこから連れてきたのか、素晴らしい体格の牛と綱引きをする円堂を遠目に見ながら、鬼道は呆れ、豪炎寺はいつものことだとポーカーフェイスを決めていた。
帝国学園では、あんな特訓を誰も考えやしないだろう。
否、帝国に限らず他の学校でだってそうだ。
「無茶苦茶な奴だ」
鬼道が呟く。
豪炎寺はその言葉を聞き、視線は円堂に向けたまま笑みを深めた。
「だが、そんなアイツに俺は惚れたんだ」
その真っ直ぐな言葉に、ほんの一瞬だけ鬼道の思考が停止する。
しかしすぐに鬼道は鼻で笑い、未だ円堂から視線を外さない豪炎寺を蔑むように見やった。
「ハッ…クズがクズ同士惹かれ合ったという事だな」
くだらない。
牛に引きずられてわけのわからない叫び声をあげる円堂に踵を返し、鬼道は一歩踏み出した。
「お前も“だから”惚れたんだろ?」
そんな鬼道の背中に、豪炎寺の声が突き刺さる。
驚いた鬼道は反論してやろうとバッと振り返ったがしかし、豪炎寺はすでにグラウンドに駆け出してしまい反論どころではなかった。
「…俺が、あんなクズに惚れているだと?」
豪炎寺が、ファイアトルネードを放って牛と円堂の間の綱を燃やし千切る。
当然グラウンドに叩きつけられた円堂は痛みに顔を歪めていたが、豪炎寺の顔を見るなりその表情はすぐ笑顔になった。
その笑顔は、豪炎寺だけのもの。
「…くだらない」
あの笑顔の先が、自分でないことを悔しく思うなど。
鬼道は今度こそ2人に背中を向け、今の光景も想像も打ち消すように瞳を閉じた。
‡fin‡