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そろそろ、手を出してもいいんじゃないだろうか。

ヒロトは、あまりに無防備な幼馴染に焦燥を感じはじめていた。


――――if!if!if!


「ヒロト、これってこの公式あてはめんの?」

「ん?そうだよ。守は理解が早いね」

「ヒロトの教え方が上手いんだよ!」

放課後、雨が降って部活が中止になったために、円堂は迫り来るテスト勉強をするためヒロトを机を並べていた。
それなら家に帰ってもできるのでは、と思わなくもなかったが、家に帰ればきっとそのままサッカーの話しをして終わってしまいそうな気もする。
ちなみに、教室でしようと言い出したのはヒロト。
実を言うと南雲は本日家の掃除当番。ガゼルは料理当番。
二人は早々に家に帰っているので、二人で過ごすには教室で残った方が都合が良いのだ。

「(幸せだなぁ)」

横で唸りながらもノートに数式を書き込む円堂を見つめ、ヒロトがくすりと笑う。
円堂は本当に可愛くて、たまらなく愛しい。
男だとか性別などそれこそ関係ないほどに、ヒロトは円堂を心底愛していた。

「できたー!!」

「お疲れ様」

わぁっと両手を広げる円堂の頭をぽんぽんと叩けば、いつもの笑顔でへへっと笑う。

「(ああ、本当に可愛い)」

そっと、円堂の顎に手をかけてヒロトは己の顔へと近づける。
その自然な流れに円堂はきょとんとして反応が遅れたが、気付いた時には、

頬に、キスをしていた。

「……!!!!??」

「ご褒美、だよ。さぁ、もったいないけど帰ろうか」

「へっ?あ、あぁ…うん、そうだな!」

かたんと席を立ち、鞄を持ったヒロトがあまりに普通すぎて、円堂はしどろもどろになりながらノートを閉じて鞄に突っ込む。
しかし何だか妙に胸がモヤモヤして、顔がやたら熱くて、何か言いたくても喉につっかえて言葉にならない。

そんな自分の気持ちの整理がつかないまま、円堂はにこりと微笑むヒロトの手を取って教室をあとにした。

‡FIN‡
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