箱館novel log

□夜更かし
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時計の針がチクチクと音を立てて進む。
俺は読み終えた本を閉じて時計を見る。最後に見た時からまだ三十分しか経っていない。長い。長すぎる。
いい加減重くなった瞼が閉じないように必死で耐えながら、机に向かってひたすら洋語を書いている鉄之助に目を向ける。
洋語に精通してる色んな人に教えてもらいながら仏国士官から直に指南を受けている銀之助や鉄之助。
本日…いやもう昨日になった、講義で課題を出されたそうだ。


「まだ終わんねぇのかよ」

「まだ掛りますよー」

せかせかと筆を走らせるのと同じ速度で鉄之助は俺の質問に即答した。
そしてチラリと時計を見る。俺にとって長い三十分も勉強してる鉄之助にとったら全然短いだろう。

「どうぞ、先生は先に寝て下さい。俺まだまだ掛るんで」

「ふん。お前のために起きてんじゃねぇよ。勘違いすんな」

そう言うと、鉄之助は筆を置いて伸びをした。

「あー終わらない。もしかしたら朝まで掛るかもしれない…」

にたりと笑って俺の方を見る。なんだテメェその顔。
上等だ、朝まで起きててやらぁ。

「仕方ねぇな、途中で寝てたら叩き起こしてやるよ」

「それは頼もしいです」

鉄はそう言ってまた洋語を書き始めた。
あーくだらねぇ。
今まで後回し後回しになってた兵学書を部屋にあるだけ片っ端から掻き集めてきて、一番分厚いやつを手に取った。
夜はまだまだ長い。









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