箱館novel log

□鬼さん、こちら
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「勝先生ー?どちらですかー?怒ってなど居ませんから出て来て下さーい」


うそをつけ!
笑顔なくせに血管浮いてるし、殺気ハンパねぇし、
なによりいつもの調子と変わらない口調が今は余計に恐ろしいわっ!!
俺ァはまだ死にたくねぇ!

え?何してるかって??
そんなん矢田堀から逃げてるにきまってんじゃねーか!!
は?何でかって?
そりゃあ、まぁ…



「おーうぃ矢田堀、いねぇのか…ん?なんだコイツ」

あいつを訪ねて部屋に行けば、棚の上に置かれていたのは一隻の帆船の模型。
ほぅなかなか精巧じゃねぇかと思いながら触れようとすると、そいつは床へ真っ逆さま。しかも、マストが一本折れやがった。一瞬でまるで沈没船になった。

「やっちまった…」



と言うわけだ。
案の定ヤツは青筋浮かべてオレのことを探してる。
正直ものすごく怖ぇ。

「あ、勝先生。そんなトコで何してんですか?」

「ばっ!テメェ早く隠れろクソガキ!!」

脳天気な声で話しかけてきた榎本を咄嗟に部屋の中へ引きずり込んだ。

「また景蔵先生を怒らせたんだ。学習しなよ先生も」

「うるせぇな!俺ァなんも悪くねぇよ!」

相変わらず生意気なムカつく野郎に言い返す。

「ですってー、先生ー」

「あ?」

後ろを向いてにやにや笑う隣の生意気なガキ。
その視線の先には鬼の化身かはたまた大魔王か何かか、奴ががいた。バレた。

「ほぉ…人の部屋に無断で入った挙げ句に物を壊しておいて御自分に非はないと仰有いますか…?」

「いや、ちがっ!」

「なにがどう違うと?説明して頂きましょうか?えぇ?!」

「わるっ…悪かった!謝るっ!すまねぇ許せよっ!」

こうなったら謝り倒すしかねぇ!両手合わせて拝み倒してやる!
と思ったら、奴は俺が合わせた手を掴み、役職宅の方へ引っ張っていく。と言うよりもはや引きずってる。強く掴まれてる左手が痛てぇ。力が半端ねぇ。

「うおぉ痛てててて、ちょお待てコラ!オイィィ!」

堪らず声を上げると、奴は世にも恐ろしい笑顔を俺に向けた。


「覚悟してもらいましょうか、教授……」

「ちょっと待てっ!オイ!オイコラァアァァァァ!」



そのあと、勝先生は吟味書(テスト用紙)の採点を全て任せられたとかで。
次の日に見掛けたら目の下のクマが濃くて超絶不機嫌でした。by釜次郎






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矢田堀先生は最強です。って話し。荒井さんの穏やかな微笑みはきっと叔父さん譲り。




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