沖田総悟

□届かないコトバ
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目の前に広がるのは真っ赤な血のしぶき
いつもは相手のモノなんだけどねィ。
今日は、俺の。

「隊長――――!!!」

あぁ油断大敵、か
彼女の叫び声を背に俺は意識を手放した。

気が付くと木にもたれてた俺。
隣には心配そうに顔を歪めた彼女がいて
多分、先ほどの攘夷志士を倒しここまで運んできてくれたんだろう。

「隊長、ここで待ってて下さい。絶対に、待ってて下さいね。」
「はっ・・・んなこた言わなくたってどうせ動けやせんぜ。」

吐き捨てるように言う俺。
彼女がここを動くなという意味で言ったんじゃないなんて百も承知。
朦朧とした意識の中、既に血で濡れた剣を振りかざし
数十人ほどの攘夷志士たちに向かって駆けていく彼女をただ眺めた。
・・・情けねェ。
隊長の俺が守ってやらねーといけねぇのに。
いくら強いとはいえ女一人であの数、無傷ではいられまい。
融通のきかない身体を恨めしく思う。


―――――――――


「・・・ただいま戻りました、隊長」

そう言ってなだれるように俺のもとに座り込む彼女。
そこにはいつもと変わらない微笑。
ただ数分前と違うのは彼女の左腕が見当たらないことだけで

「隊長・・・私ずっと隊長のこと、好き、でした」
「・・・知ってまさァ」

そうですか、と微笑み俺の肩にもたれる彼女

「俺も、愛してやした」






もう聞こえてないだろう彼女へ


あっちに着いたらもういっぺん言ってやりまさ
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