記念小説
□來と七人の小人(?)
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俺は一つの国の王子として生まれたはずだが、俺を産んで亡くなった母さんの希望で、女の子として育てられた。
どう見ても男にしか見えない俺を女として育てようと決意した真さん(父さんって呼ぶと泣くんだよ)を本気で関心する。
「來君、新しいドレスが出来たみたいです。早く着替えて見せて下さい」
急に部屋に入って来た真さんが、大きな白い箱を持ってきた。
これはいつものこと。
女らしくするためには必要なんだって。
そのために髪も腰まで伸ばして、切ることを許してくれない。
「部屋の外で待って居ますから、着替えて終わったら呼んで下さいね」
それだけ言うと、白い箱を押し付けて出て行った。
真さんの出ていったピンクのドアを見て、ため息をついた。
ドアだけじゃない…部屋中がピンク一色で目が痛い。
この部屋は最近変えられた。
俺の新しい義母さんによって…
なんで真さんはあんなウザい人を選んだのかな。
また大きくため息をついた。
―別室―
薄暗い部屋に大きな鏡と、深くフードを被った1人の人。
「鏡よ鏡、世界で一番來ちゃんが好きな人は誰?」
鏡に映ったスラッとした姿が揺らいで、金髪の体格のいい男前に変わった。
「そんなの決まってるだろ。來が一番好きなのは俺だ」
鏡の中の男が自信あり気に言い切った。
それを聞いた黒髪の人が顔を真っ赤にして激怒した。
「そんなことはない!僕は來ちゃんの側にいる為にあんな人と一緒になったんだぞ」
叫んだ瞬間にフードがパサリと落ちた。
そこには黒髪の紳士のような出で立ちの男が居た。
「俺がそう言うんだ。信じろよ」
鏡の中ではニヤニヤと笑う男。
それに余計に怒りる男は、一瞬金髪の男を睨んで部屋を出た。
「來ちゃんがあんなの好きな分けない!來ちゃんは僕が…」
ブツブツと呟きながら廊下を突き進む男が庭に出た。
「椿!椿はどこだ!」
庭に向かって叫ぶと、何処からか1人の猟師が出てきた。
「はい、何でしょうか?樹弘様」
「今から直ぐに來ちゃんを森に連れて行って1人残して来い!」
人の上に立つ人間だと分かる力がある。
それだけ言った樹弘はそのまま中に戻った。
「これで來ちゃんを迎えに行けば僕が一番に…」
「また下らないことを」
庭に残った冬夜が呟いた。
「また豪が何か言ったか」
舌打ちをして、冬夜も中に入った。