長編2
□光と闇は
1ページ/68ページ
「白井君、榊君」
いつも通り森から授業に向かう後ろから呼ばれて2人揃って振り返った。
手を振る草川先生に気づいて足を止めると、小走りに距離を縮めて来る。
「良かった、途中で出会えて」
「何かありましたか?」
また場所の変更だろうと思いながらも一応聞き返したが、やはりそうだった。
「うん。今日は実習場確保したからそっちに移動してもらえる?」
「あ、はい」
早速方向を変えたが疑問が多くある。
今やっている授業内容でわざわざ実習場でやる必要はない。
しかも夏休みが近いからか、実習場を使うところは多い。
そんな中わざわざ確保した事には意味があるだろう。
「今日は白井君には良い勉強になると思うよ」
「え?どういう…」
「実習場に着けば分かるよ」
珍しく含み笑いの草川先生は上機嫌に俺の前を歩く。
今にもスキップでもしだしそうだ。
そんな草川先生の後ろを着いて行くと、久しぶりに来た実習場に意外な人を見つけて一瞬足が止まってしまった。
「どうした?」
「あ、大丈夫です」
小声で声を掛けてくれた真守君に少し微笑んで足を踏み出した。
「お待たせ。時間が勿体無いから早速始めようか」
そう言って草川先生が新延玄の肩を叩いた。
叩ける事にも驚いたが、新延先輩が授業に出てきたのも初めてで驚きが表情に出る。
「闇属性では白井君の先輩になる新延玄君。で、こっちが白井翠君。新延君と同じくらい素質があるよ」
嬉しそうに説明して実習場を開ける草川先生はいつにも増して楽しそうだ。
今時これほど教師に向いた人もそうは居ないだろう。
担任を見ていると尚更そう思える。
なんて考えて気にしないフリはしているがやはり気になる。
視界に新延先輩を捉えてからずっとガン見されている。
これはいろいろとやりづらい。
一瞬も気を緩められないのはストレスだな…
「入って。先に新延君から。何やっても良いけど、出来れば分かりやすい物が良いかな」
もう完全に目を輝かせる草川先生にはこの情況が見えて居ないのだろう。
新延先輩の舌打ちも聞こえて居ないのかも知れない。
それでもパートナーを呼ぶ辺り意外と素直な人なのか?
もしくは草川先生が凄いのか。
どちらにしても今の俺には分からない。
戸惑いながら流れを見ていると、影が蠢き出した。
驚いて1歩下がったが、その影が伸びて1つになる光景に落ち着いて見る。
こんな事も出来るのか…