長編
□ハロウィンには
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親衛隊のピリピリした空気を感じながらハロウィンパーティー当日を迎えた。
結局、最終準備で授業にも出ない日々が続いたおかげで面倒な嫌がらせも登校の時だけだったからそんな気にしなくて良いのに。
「準備で来ました?」
「もうちょっと待って〜」
目を閉じたまま冬夜先輩となつめ先輩の声に耳を傾ける。
なつめ先輩が顔に触れてるのは分かるけど何やってるか全くわかんねぇ。
「う〜ん…こんな感じかなぁ?」
なつめ先輩の声にうっすら目を開けようとしたけど瞼が重くて上がらない。
「後はこのウィッグで〜……完成!」
頭まで重くなったんだけど…
「もう目開けて良いよ」
「…違和感しかない」
瞬きを何度繰り返しても目の周りの違和感が気になって気になって。
「可愛い!ライちゃん似合ってるよ」
「何が似合ってるか分かんないだけど…」
よいしょっ、と立ち上がってもっと違和感が増えた。
さっき着替えさせられたおかげで、足元はスースーするしスカートのボリュームが邪魔で歩き辛い。
女の子ってよくこんなの履いて動けるよな。
いや、ナチュラルに来て動いてるなつめ先輩が一番凄いのか。
「お揃いで可愛いよ〜!今日は僕達双子だからずっと一緒、ね?」
「……イヤ」
悪目立ちにも程がある。
残念な平凡と、雑誌の表紙に居ても不思議がないなつめ先輩が並んで歩くとか泣ける。
この格好ってだけでも泣きたいのに。
「ダメだよ〜理事長からの指示だもん」
「余計な事を…」
樹弘さんがくだらない事言わなきゃこんな事にならなかったのに。
「先に会場行ってるから」
「はいは〜い」
部屋の外からの徹の声に返事して廊下に出た。
「ライちゃんリボン忘れてる」
「え?まだあんの?」
「ちょっとしゃがんで」
肩を押さえられて仕方ないから膝を着いたら頭に細いリボンを付け出した。
長い黒髪が揺れるのを見てたらシキを思い出して笑った。
シキにリボン付けた事あったぁ。
「ライちゃん?」
「え?いや、行くか」
「うん!」
急に笑い出した俺を不審に思ったなつめ先輩が覗き込んで来て、リボンを付け終わった事に気がついた。
手を繋いで来たなつめ先輩の手を振り払う暇も無く走り出した。
よくあんな靴履いて走れるなぁ…
今日は平らな靴で良かった。