長編

□ハロウィンには
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「もう帰りたい…」


1歩歩く度に違う人に囲まれて弾丸トーク。

聞き取るのもギリギリな勢いで話すから、半分も分からなかった。

それを笑顔で返事するなつめ先輩に本気で感心したわ…

まだ相手してるだろうなつめ先輩を会場に残して外に避難したものの、離れる訳にもいかなくて座り込んだ。

服を汚さない様に気をつけながらってのがちょっと切なくなる。


「何でみんなあんなにお世辞が巧いのかね…」


明らかに嘘だと分かる褒め言葉の数々に感心したと同時に、それだけこの格好は目立つって事だ。

汚そうものなら何を言われるか…

真っ暗な森に向かって大きくため息をついた。


「「居たー!」」


「うおおぉ〜!!?……香里先輩と杏里先輩か」


マジで驚いた…

会場裏だから周りはけっこう暗いし、しかも暗い森から出てくるなんて反則だ!

バクバクうるさい心臓を押さえて顔を上げた。

そこでようやく気がついた。

暗い森から全身真っ黒じゃ気づく分けない。

揃って長ランに、ご丁寧に風紀なんて書いた腕章までしてる。

そんな事しなくても2人が風紀なんて皆知ってますよ。

もしかしてこれは仮装のつもりか?

会場でさまざまな仮装を見たからツッコミは控えるけど、これはちょっと違うと思う。

まぁ、俺自身もどうかと思うけど。


「生徒会の見回りは?」


「風紀だけとかじゃないよね?」


「え?」


何故俺が攻められてんだ?

確かに手伝うって事にはなってたけど、今は確か徹と和泉先輩のはず。

それだって風紀に前もって連絡してたし。

もし居ないってなら俺じゃなく会長の徹に。

なんて思っても、言い返す余裕も与えくれない。


「「僕達だけパーティーに参加出来ないなんてあり得ないって分かってる?」」


「いや、まぁ…」


そんな抜けられないくらい問題発生してるのか?

なんて考えてる間に怒ってるのか楽しんでるのか分からない嫌な笑みで距離を縮めて来る。

何か嫌な予感が…


「「だ・か・ら」」


「えっ?」


今ハッキリと自信を持って言える!

ヤバい!楽しんでる!!


「一緒に会場入ろうか」


「風紀に守られるお姫様」


「え?ちょっ、いや」


ガシッと腕を組まれて身動きが取れないまま立ち上がらされた。

これはお姫様じゃなくて捕らわれた宇宙人の扱いだろー!!

俺の叫び虚しく引きずられるようにして会場に戻された。
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