長編

□ハロウィンには
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ちょっと感動…

こんな悪目立ちする格好だから集中豪雨を覚悟してたけど、何もない!

階段で押される事も物が飛んでくる事も、ましてや降ってくる事も無いなんていつ以来だろう。

感動に身を震わせながらなつめ先輩に引かれて会場に入った。


「……すげ〜…」


違う世界にうっかり入っちゃった気になる…

魔法使いやら魔女に始まり、王子っぽい格好やらあれはクマ?

仮装の方向間違えてませんかね、それ。


「うおっ!」


すれ違ったフランケンがリアル過ぎてマジでビビった。


「ライちゃん大丈夫?」


笑ってるなつめ先輩に視線が集まる。

絶対今の驚くのって俺よりなつめ先輩だと思ったのに笑ってるだけだし。

これも慣れなのか…


「みんなの視線集めてるんだから、もっと可愛い声出さないと」


「え!?」


それ注意するとこ!!?

てか、男の俺に可愛いとか求め無いで!

確かに入った瞬間から周りが静まり返って視線は嫌って程感じてるけどさ、それはこの服で残念な俺に言葉失ったんだよ。

良い証拠になつめ先輩に気づいて悲鳴聞こえて来たじゃん。

たまに魔法少女とか聞こえるけど…


「今日は僕達双子なんだから」


だからどうした。

この世には出来る事と出来ない事ってのがあってだな、平凡は平凡にしかなれねえよ。

今まで生きて来てよく分かってる。

俺の周りって常に美形が居るから尚更な。

無駄なあがきなんてしない!

それに可愛いってのは努力とかの前に、気持ち悪くしかならないだろ。


「って事で、一緒にステージ上ろー」


「え?ちょっ、ま、マジでやめてー!!!」


俺の叫び虚しく、相変わらず強い力で引かれて階段に躓きながらステージに上がった。

ヤバい…これはマジで消えたい…

突き刺さる視線に耐えられない。

なんて地獄…

マイクを持って嬉々としてステージの真ん中に向かうなつめ先輩の後ろ姿がスゲー大きく見える。

今日はホント俺と同じ身長だけど、そう言う事じゃなくて…


『みんな楽しんでるー?』


どっかのライブ会場バリに盛り上がってる会場で、ただ1人順調に落ちて行ってる俺が居る。

なつめ先輩が集める視線に俺まで入っちゃってるのが悪い。


『今日は後半にゲームも準備してるから最後まで帰らないでね』


なつめ先輩の発言1つ1つにちゃんと返事が返ってくる。

それはもう地響きの様な…

声で揺れてるのか、羞恥で震えてるか自分でも分かんなくなって来た。

最後どころか今すぐ帰りたい。

今なら落とし穴にガッツリはまっても、下にクッションさえ有れば泣いて感謝する。

この視線の嵐から脱出させてくれー!!!
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