小説
□ただ、あなたの為に
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目が覚めると、僕は寝台の上にいた。
耳が痛むほど辺りは静かで、布の擦れる音だけが聴覚に訴える。
「……ん…」
起き上がろうと腕をついたその時だ。
「………!?」
まるで骨を抜かれた様に肩がぐにゃりと外れて、僕は寝台から転がり落ちてしまった。全身から、一切の感覚がなくなってしまったようだ。
見ると、腕には包帯が巻かれている。
自力では立てそうにもない。
首だけあれこれ傾けて、あたりを見回してみた。
床は堅くて冷たい。
傍にある机の上にある器が水のように透き通って見える。
上を見れば、壁の高い位置に小さな四角い穴から光が漏れている。閉め切った部屋が明るいのはこの為か…
とにかく、此処は何処なんだ…?
布団に絡まったまま仰向けになっていると、何か頭蓋にコツコツと直接響いた。
足音だ。二人分ある。
歩調からして、子供と大人…大きい方は恐らく女だ。
こっちに向かってくる。