夏目友人帳 short

□拍手文
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「なーつめっ」

彼女の声と共に突然、視界が真っ暗になる。


「うあっ…!」

驚きすぎて、声が裏返ってしまった。


「あ……、ゴメン…驚いた…?」

「あ、あぁ…」

そうおれが短い返すと、彼女はごめんね、ともう一度言いながらおれの隣りに座った。



さらっ……、と風が彼女の長い髪をなびかせる。

綺麗だな……、なんて考えながら、彼女を見ていたとき………

「どしたの?わたしの顔になんかついてる?」


「いいい、いや…!なにもっ…!」


心臓がバクバクと早鐘を打つ。


「そっ…、そういえばこんなとこでなにしてんだ?」


「別に〜なんか暇だったから、たまには公園行くのもいいかな〜って」


「そうか…、」


会話が終結してしまった。
こうゆうとき、自分が話上手じゃないことが嫌になる。

今みたいなときくらい…、
好きな子と話すときくらい、上手く話せたらいいのに…、


情けないなぁ…、おれ、

そんなふうに考えながら黙り込んでいたとき…、ザッ!と彼女が立ち上がり、口を開いた。



「嘘。」


「………え…?」



「………暇だったからなんて、ウソ。……ホントは、夏目くんが公園に行ってるのを見たから…………、」


そこまで言うと、彼女は俯き、一拍おいて再び口を開いた。


「夏目くんに逢いたくて来たのっ……!」



彼女の言葉を理解するのに数秒かかった。


熱が顔に昇るのがわかった。
彼女もおれと同じ様に、顔を真っ赤にしている。


「わ………わたし、夏目くんのこと、好きなのっ…!ずっとずっと前からっ………!」



信じられない言葉だった。

彼女が自分のことを好きだったなんて……、




「明日……、昼休みに屋上で待ってるからっ……!じゃっ…!」


そう言い残すと、彼女は走りながら帰っていった。





ぽつんと、おれは独り残された。



「ふ………、」

思わず笑みが零れる。


「言い逃げかよ…」



明日、おれの気持ちを伝えたら、どんな顔をするんだろう………、


「明日が楽しみだな、」
そう言うと、おれは立ち上がった。

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