Ballad of Love
□第二話 穏やかに揺れる風
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声「──起きろ」
微かに遠く声が聞こえる。
声「さあ、起きろ」
声は確実に近く、そして強くなっていく。
声「いい加減にしろよ。起きろってば!」
今度は振動が加わった。彼の身体が激しく揺さぶられているようだ。意識ははっきりしない。気分は最悪。頭も身体も重い。原因は判っている。持ち前の低血圧と、あの夢のせいだ。悪夢というような夢見の悪さ。
声「だから、起きろって!遅刻するぞ!!」
声はいっそう強さを増して、身体を揺さぶる振動も、より激しくなった。彼も判ってはいる。が、身体がなかなか言うことを聞いてくれない。激しいダルさが身体を襲っているのだ。
声「おい!寝るな!二度寝禁止ッ!!」
雅「………………」
無理だ。起きられない。
声「こら、起きろ!」
無理だっつってんじゃねーか。しつこいっつーの。
声「このバカっ!こうなったら───ッ!」
彼は自分の身体が、ほんの一瞬だけ浮遊したように思えた。
どさっ!!
雅「グエっ…………」
カエルが潰れたような声を出して、彼の身体は床に転がっていた。衝撃でさすがに少しだけ目覚めた…ような気がする。
うっすら開いた目。ぼんやりする視界に人影が見える。
男「どうだ、起きたか?」
人影はそう訊ねてきた。
雅「……アニキ…………。ぐぅ…」
男「寝るなぁ!」
目覚めはなかなかこない。