Ballad of Love

□第三話 雨落つる空、舞う風
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長い夏が続いている。
十月に入っても、真夏日を経験した。
こんな状態で勉強になど身が入るワケがない。
カノジョは、もっか“カレ”のことが気になってしかたがなかった。

「あれ?付き合ってるんじゃないの?」
とか、クラスメイトに自分とカレの関係を訊ねられても、

「付き合っています!」
なんて、大きな声で言える関係ではない。と気付かされるばかり。
なにしろ、カノジョは、まだカレとちゃんと手を繋いだことすらないんだから。
たしかに、クラスメイトから「付き合ってるんじゃない?」と思われているくらい、カノジョとカレは仲がいい。お昼(ランチ)もいっしょしてるし、いっつもいっしょにいる。
が。
しかしだ。カレはどう思っているのか判らないけれど、今日はお昼をいっしょしていない。四限が終わって、カノジョがお弁当を持ってカレの席にいくと、もうそこには姿がなかった。
そりゃあ、まあ。べつに、

「お昼はいっしょにねっ。うふっ」
とか、約束してるワケでもないけど……。
一言くらいあってもいいじゃん。
そう思う。
あーあ、最近なんかつれなくない?
些細なことがどうにも気になってしまう。
私が困っていると、ふらりと目の前に現れてくれるカレだけど、こうしてふらりと置いてけぼりを喰らわされることもある。
たぶん、というか十中八九、カレは意識しての行動じゃない。故意に自分を避けているんじゃない。
じゃあ、どうして?
とも言いたくなるけど、なかなか……。
カレと親しくなってまだ数ヶ月。でも、カノジョはカレのことがよく判る。逆もまたしかりで。
それなのに、なんだろう。
この“もやっと”感。
カレの考えは判る……いや、むしろ逆に、カレは考えてないんだ。
特に何を強く想ってとかそういう行動じゃない。なんとなく、思い付いたのでそうしてみました。という感じ。
だから、「どうして、そんなことするの?」「私とお昼いっしょにしよ」なんて言えないんだ。
だって──付き合ってるワケでもなんでもない。私にカレを束縛する権利も筋合いもなんにもない。
……そうです。付き合ってませんから。
それに気付いて、結局、またブルーになった。
で──
カノジョが気にかけてやまない件(くだん)の“カレ”はというと…、
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