青学

□辛口甘味
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今日に限って桃城が朝から俺を無視する。
朝練の際に声をかけても、素っ気なく挨拶だけされた。
今日は俺の誕生日で、俺たちは付き合ってるのにな…。
移動教室で見かけても、俺以外には普通に話しかけているみたいだった。
そんなことをされて、俺は一日不安だった。
嫌われたのだろうか、そんなことを俺はしたのだろうか、頭をぐるぐる回り、授業も頭に入らなかった。
ずっと、ずっと、桃城のことを考えていた。
届きそうで届かない、まるで付き合う前みたいなそんな愛しさ…。
アイツの笑顔を見ると嬉しい反面、唇を噛んでしまう。
そんなことばかり考えていた。

部活中も珍しく会話をしないので、先輩方も荒井も池田も不振がっていた。
俺の所為なのかよ…。
ぽそっと不安を吐き出すように呟く。
その後、部室で先輩方に誕生日を祝って貰っても、同級生に祝って貰っても、一年たちに祝って貰っても、嬉しいはずなのに、心を支配するのはアイツだけだった。

「海堂、やっぱり待っててくれてたか…」
俺以外誰もいないはずの部室に声が響く。
今日初めてまともに声を聞いた。
「居ちゃ悪いか」
そう言って睨みつける。
言いたいことは、やりたいことはこんな言葉じゃない。
「いや、待ってて貰わなきゃ計画が台無しだったんだけどよ…」
桃城は微笑むと、ベンチに座っていた俺に近づく。
「意味わかんねぇよ…」
チッと舌打ちをしてヤツから視線を逸らす。
素直になれない自分にイライラして、さらに口調が悪くなる。
「まぁ、そう怒るなよ」
桃城が隣に座った気配がして、柔らかな感触が頬にした。
俺は驚いて桃城の顔を振り向くと顔を赤らめていた。
「今日はお前の誕生日だから、サプライズって思ったんで、こんな感じになっちまったけどさ…」
「サプライズ…?」
「や、俺が一日話しかけなかったら、お前は俺のことで頭がいっぱいになるだろ?その後にいっぱい二人で居たら嬉しさが増すかなって思ってさ!!」
いい考えだろ?って満面の笑みを向けられたが、今までの不安からヤツを抱きしめた。
「海堂…?」
「お前に嫌われたかと思って、俺…」
抱く力が無意識に強くなる。
腕も振るえて、あぁ自分はなんて格好悪いんだろうと思った。
「それは悪かったな、でも海堂のこと嫌いにならないにはならねーからさ、大丈夫だぜ」
そう言われるとウジウジ考えていた俺が少し恥ずかしくなる。
そこで安心した俺はベンチに桃城を押し倒した。
「この辛かった分、覚悟しろよ」
「しょうがねぇな、でもよ、一言だけ先に言わせてくれよ」

「          」

The end
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