□■NOVELS*死神と僕の42日間■□

□ 11日目
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 ローテーブルへと伸ばした片手で、汗をかいてひしゃげたアイスクリームのカップを掴む。

 怪訝そうな顔をしたLが何か言う前に、
液体化し始めたアイスクリームを二本の指で掬い取りその口元へと差し出してやる。

 窺うように見上げるLは、唇を叩く冷えた感覚におずおずと舌先を覗かせた。

「美味しい?」

 訊きながら口中の奥へと指を侵入させていく。

 口蓋垂に触れるまで押し入ると、Lは大きく胸を震わせ苦しそうにえずいた。

「はは、ごめん。やりすぎた」

 謝罪しているとは思えない軽い口調で指を引き抜き、再びアイスクリームを掬う。

「はい、もう一回」

 睨むと言うにはあまりにも弱いLの視線を感じながら、月は見本を見せるように口を開いた。

 けれどLは、僅かに顔を背けてそれを拒む。

 月は声を潜めて小さく笑った。

 Lの顎を掴んで正面に引き戻し、閉ざされたままの唇に濡れた指をなすりつける。

『・・・・・・う、』

 唇を伝う溶けたアイスクリームを舐め取ろうとするLの舌を、月の唇が追い掛けて捕らえた。

『―――っん・・・・・・』
 
 甘ったるいバニラの味と混ざり合ったLの唾液。

 これが欲しかったのだ。

 脳髄まで溶かすような甘美な舌に優しく噛み付き、
反射的に逃げようとするLの髪を掴んで口中を深く侵凌する。

 苦しそうに呻く声は、次第に快楽に蕩けた甘いものに変わっていった。

 躊躇いがちにそっと応えるLの舌を絡め取るように甘噛みし、
互いの間で溢れる唾液を啜り上げる。

『ん・・・・・ぁ、』

 ゆっくりと唇を離すと、名残惜しそうな声が赤く色付く唇から零れ落ちた。

「そろそろこっちも欲しくなった?」

 常ならぬ優しい声。

 しかし問い掛ける言葉は淫猥だ。

 月はアイスクリームのカップをLの目の前に掲げ、屈託の無い笑みを向ける。

 嫌な予感にLの背筋が凍りついた。











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