れんさい

□純度120%
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「ほら、座って」
「悪ぃな…」
「そう思うならもっと自分を大切にしてよ」

救急箱を広げながら、人間はオレを鋭く睨んだ。



【独占欲】



「随分と躾けてるようだけど、匣に名前を付けるなって何度も言ってるだろ」
「だって…こいつらもこれからオレ達の仲間だし」
「君がどう思おうとこれらは兵器だ。近づこうとするな。情が移れば君は戦えない」
獄寺の傷口に消毒液を塗りながら人間が淡々と言葉を紡ぐ。

獄寺に制止をうながされたオレは、不本意ながら素直に言うことを聞いたと褒められ頭を撫でられた。
そのまま片手で抱きあげられていまは獄寺の膝の上。

「こいつはオレ達の仲間なんだから仲良くしろって」
苦笑する獄寺がこの人間は雲雀恭弥という名前なのだとオレに教えた。

威嚇をつづけるオレの背を空いている手で優しく撫でる獄寺はどこか楽しそうに笑う。
「なに笑ってるの?例えばこの匣が敵の手に渡って、そいつがこの猫で君を攻撃しようとしたなら…君は本気でこれを倒せる?」
獄寺の仲間だというわりにはオレへの認識がかなり違うようだ。
向ける殺気を緩めようともせず、人間は兵器としてのオレを語る。

獄寺は笑いを抑えようともしないまま頷いた。
「本当にそうなれば戦うし、勝つ自信もある。でもそんなことにはならないって確信もあるぜ」
そう言ってオレの耳の裏を撫でてから鼻先をつつく。

「こいつはそう簡単に人間に従わない。とくに、自分を兵器としか考えないようなやつには」
「なに言ってるの?」
不思議そうな目の前の人間に獄寺は、だからこそ名前を付けたんだ、と楽しそうに語った。

「こいつは…瓜はオレを裏切らない。オレが裏切らない限り」

呆れた、と人間はため息をつく。
「にょおん」
自信に満ちた声に、優しく撫でてくる手に、見あげたさきの力強い翡翠の瞳に、獄寺のもつ銀の髪以上のキラキラを感じてオレはむず痒さに鳴くことしかできなかった。

獄寺がそれを肯定ととったけど、オレはそのときの感情をもっとあとになってから気づくことになる。



「それはそうと、今回もいくつか匣見つけてきたぜ」
手当てを終えて几帳面に白い包帯が巻かれた手で、獄寺は服のポケットからごそごそと匣をとりだした。

「10代目にお渡しする前に、中身の確認とできるだけの分析しちまわねーとな」
にかっと、まるで遊びでもはじめそうな表情で子供っぽく笑う。
人間はそれを見て一瞬だけ、本当に楽しそうに笑った。

「嵐のリングで開匣できたのは2つ。ヒバリは雲と霧担当な、この作業ひとりひとつのリングで分担した方がてっとり早いんだけど…」
「ここでまで群れるなんて絶対に嫌だよ」
「わーってるって」
人間の言葉に苦笑してから、獄寺は次の匣を手にとる。

匣は開いたり開かなかったり。
属性を探すのも一苦労といった感じだ。
「だからいつも沢田に開けさせればいいって言ってるじゃないか」
「アホ!まだ匣の確かな安全は保障されてねーんだ。10代目に中身もわかんねーような危険な物渡せるか!それに中身確認することだけが目的じゃねーだろ。属性と種類、使い道、なにもかも10代目のお手を煩わすことじゃねぇ」

獄寺の反応がいままでと違う。
言葉の選び方も、その声に含まれる感情も。

気にいらない。

なぜそう思ったのかもわからないまま、オレは獄寺の背中に飛びついた。


おかしなやつは「変な自信家」

'08/7/6


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