れんさい

□純度120%
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「ヒバリいるか?ただいまぁ」

見慣れない形状の通路から、まったく面識のない部屋までたどりつく。

完全に他者のテリトリー。
圧倒的なプレッシャーを全身で感じた。



【侵略者】



獄寺は慣れた様子で迷いなく歩きつづけ、ひとつの戸の前で立ちどまる。

「ヒバリいないのか?」
確認するその声音はオレと同様この部屋の人間の存在を確実に認識していた。
「ひーばりぃ?」

「もう!いるのわかってるんでしょ!?いつもみたいに勝手に入ってくれば…」

すぱーん、と横にスライドした戸のさきにいた黒い人間と眼があう。
またもオレをもちあげた獄寺が、今度はこの人間の目線にあうように計算して高さをあわせたからだ。

黒い人間はよく見れば獄寺と違う瞳と髪の色をしているだけで、肌は白かった。

獄寺だけだったオレの世界に現れた新たな人間。
獄寺の様子から、とても気心の知れた相手なのだと理解できる。

その事実が気にいらなかった。

「シャアアア!!」
オレの威嚇を前に、人間は呆れたとため息をつく。

「いつも言ってるでしょ?アジトでは飼えないんだから…元いた所に返してきなよ」
「こいつは捨て猫じゃねーぞ」
「それはわかってるけど、その匣兵器…生意気」
すっと眼を細めてオレを完全に敵視するその視線に殺気が混じっている。

「いいんだって、こいつはこれで。可愛いだろ?」
「前から思ってたけど、君の可愛いの基準ておかしいよ…っなんなのその怪我!!」

勝手に可愛いとかぬかしながら獄寺は胸元にオレを抱き込んだ。
その拍子に目の前の人間にも獄寺の手に巻かれた真っ赤に血が滲んでいる布が見えたらしい。
獄寺の細い腕を掴んで強引にひきよせた。

「っと、そんな大した怪我じゃねーよ」
「十分大怪我だよ。こんなに血がでてるじゃないか」
獄寺の腕の拘束が他人の手で解かれたことに不快感が全身を襲う。
着地した位置から睨みあげても、人間はオレのことなんて眼中にないようだった。
さきほどまでの殺気は嘘のように、いまは獄寺へしか意識がむいていない。

「ほら、手当てするから。こっち」
「いいって、これくらい」
「ダメ!」
オレを置いて獄寺の手をひきながら部屋の奥へと向かう人間に、オレは本気で噛みつこうと牙をむいた。

「!?瓜、やめろ!!」
瞬間響く獄寺の怒声。

オレの身体は、オレの意思を無視して動きを止めた。


逆らおうと思ったわけじゃない、でも逆らえないとは思わなかった

'08/6/23


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