久々に外界の風をあびた。 見上げた先にある青は空。 青に浮かぶ白は雲。 オレはそれらを知っている。 だけど、あれは何だ。 【出会い】 「…ネコ?」 大気を震わせる音。 これは声だ。 声を発するのは人間で、オレに炎の形をした力を与えてくれる。 その力こそがオレの動力だから、人間は好きじゃないけどいなければいけない存在だという認識はあった。 でも、オレを見下ろす影はキラキラと光っていて眩しいくらいで。 こんな人間知らない。 強い嵐属性の波動。 人間がしゃがんだことでキラキラが近づいて、それが銀色の髪だと気づく。 影だった輪郭がはっきり見えて、パチパチと忙しなく動く瞳に懐かしすぎて忘れそうだった自分の姿が映っていた。 吸い込まれそうだ。 深く深く、どこまでも大地を潤す湖のような透きとおった瞳と眼差し。 なんだか身体の奥がむず痒くなって違和感をふり払うように鳴いた。 「にょおん」 「はは、仔猫か…おまえも匣から出てきたからには戦えるんだろうなぁ。こんなちっせーのに」 無遠慮に頭を撫でられて、その馴れ馴れしさにイラっとする。 いくらオレに炎を与えてくれたからといって従順になるつもりはない。 「痛ぇっ」 威嚇には十分すぎるくらいの力で目の前の手に噛みついてやる。 当然人間は驚いて手を引こうとしたけどオレは離してやる気はなかった。 「こら、離せって。痛ぇだろが」 もう一方の手がオレに伸びてきたので身構える。 殴るとか顎をつかむとか、オレの行動を制限させるような何かを仕掛けてくるんだろうと思っていたその手は、さっきと同じように頭を撫でまわすだけだった。 怒るどころか楽しそうに笑いながら、ただ優しくオレを撫でつづける。 信じられない。 いままでオレの主人になろうとした人間は何人かいた。 どいつもオレが従わないと力でねじ伏せようとする。 人間にとってオレは兵器であって命じゃない。 扱いは物と同じ。 意思なんてものが通じるはずはなくて、正確に戦うことだけを求められる。 そんな中で生意気なオレの態度は人間の機嫌を損ねることも学んではいた。 だからと言って己の考えを改める気もなかったけど。 結局はオレを従えさせることを諦めた人間がオレを匣に戻して終わり。 眼を覚ませばまた新しい人間が目の前にいるんだ。 それなのにこいつは何だ。 知っている知識の中から、イカレているという言葉をひきだした。 この人間はそれなのだろうか。 「そろそろ離せって、そんな警戒すんなよ」 警戒?それは違う。 オレはただ人間が嫌いなだけだ。 身勝手で卑しい、そんなやつらに従うなんて馬鹿げてる。 「オレはおまえを虐げない」 また、身体がむず痒くなった。 力が抜ける。 まだ与えられた炎は切れてないのに。 「っと、やっと離してくれたな…すげー痛かったんだぜ?」 ぼたぼたと白い手から血を流して、それでも人間は綺麗に笑った。 第一印象は「こいつ変なやつ」だ '08/6/15 <<戻(じゅんど) |