よみきり

□2008/12→2009/1
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〔リクエスト内容〕獄をイタリア時代から好きだったディーノ視点の雲獄で甘々かほのぼの。

【精一杯の笑顔で】



『なんか、こうやって話すの久しぶりだな!』
『そうだな。いつも大騒ぎして終いだからな』

『な!隼人、近々イタリア来いよ。いいもんが手にはいったんだ』
『ん?なんだよ』



昼間のジャッポーネのファミレス。

ふたりのときは意識して母国語で話した。
使い慣れた言葉は相手の口からも自然にでてくる。
そうしてオレは、自分達だけの会話という感覚に子供じみた独占欲を満足させていた。

実際オレ達の会話を理解できるヤツはこの店にはいなくて、日本人離れした外見と英語ですらない言葉の応酬に興味本位の視線は向くものの誰も声をかけてこない。

そのときコップに水を注いでくれた店員が困った顔で「ご注文は…」と口を開いた。
オレ達が日本語を知っているのか不安だという顔。
それでも仕事を果たそうとした勇敢な女性に笑いかける。

「このハンバーグとポテト、ライス付で。隼人はこのパスタだったよな?」
「おう」

オレ達の言葉に見るからに安堵した女性店員は照れたように微笑んで場を離れた。



いちおう流暢といわれるくらいに日本語を話せてる自覚はある。
飛行機から降りれば普段は日本語で生活していた。
それを隼人の前でしないのはオレの小さな抵抗。

キャバッローネのボスがなにやってんだろうな。

隼人は気づいてない。
母国語のほうが話しやすいんだろう程度にしか感じてないだろう。
店員が話しかけるのに躊躇したことにもおそらくは気づけてない。

そういう些細なことに気づけないのはコミュニケーション不足だ。
いままでの環境を考えれば仕方ないこと。
これからツナの傍で生活していればおのずと育つだろうな。

オレが教えてやれないのが、悔しくて少し寂しい。



隼人に影響を与えるのはオレじゃない。



隼人の世界を広げたのはツナだ。

昔からオレのファミリーになれという誘いに一度も頷かなかった隼人。
ツナはそんな頑なに自分の殻に閉じこもっていた隼人をめまぐるしい勢いで笑顔にかえた。

隼人の世界に仲間ができて、生きる喜びを全身で表すようになって、オレが安心したのは嘘じゃない。
それでもつきまとう劣等感には蓋をした。

隼人が幸せならと、そうして自分を納得させていたのに。




『恭弥は、一緒に来なかったんだな?』

『あ?あぁついてきたら別れるっつってきたから。来ねぇだろ、たぶん』
『…そりゃ来れねーわ』

あのじゃじゃ馬を隼人が手懐けてたと知ったのは、ボンゴレリングを賭けたヴァリアーとの闘争がすべて終わった後だった。

恭弥の隣で、隼人は本当に幸せそうに笑う。
この世の幸福をすべて詰め込んだような、あんな笑顔を見たのは初めてだった。

だから、オレを見ながら恭弥が勝ち誇ったように口角を上げたときも拳を握りしめるにとどまったんだ。

『なんだ。あいつと修行でもするつもりだったのか?ヘナチョコのくせにお前も血の気多いよな』
ははっと笑う隼人には考えもつかないだろうが、オレは恋敵だから恭弥に警戒されてんだって。

『違ぇよ。前回は隼人にひっついて来たろ?だから気になったんだよ』
『ああ、あれ。悪かったな、跳ね馬に逢うって言ったらついてくって聞かなくて』
『いや…過ぎたことだ気にすんな』

本当は、一番気にしてるのはオレだ。
情けねぇ。

「おまたせしました」

さきほどの女性店員が皿を持ってやってきた。
気分が落ち込んでたとこだったから助かった、と息を吐く。

「サンキュ」
「…ども」

飯を喰いながら他愛もない話をした。
日本に来てからの隼人は年頃の体験をして、急激に成長してる。
それを話ぶりからひしひし感じた。

時折こぼれおちる“恭弥”の名。
それに胸が痛まないわけじゃなかったけど。

隼人が幸せそうに、綺麗に笑うから。



恭弥が可愛い教え子なのはどうしてもかわりなくて。
悪いやつじゃないことも知ってる。

だったらオレは素直に祝福するしかないじゃないか。

『ははは…別れてやるなよ?あれ、隠れてるつもりみたいだし』
『…ん。わかってる』

オレ達の席は道に面した窓際。
そこから外はよく見える。

こっそり隠れてるらしい黒髪の少年に笑みがもれた。
隼人も嬉しそうな顔をしてる。

『愛されてんなぁ隼人』
『…そう、なのかな』

人の好意に慣れていない隼人。
それもきっとこれからどんどん覚えてく。

オレはそれを見守るべきだと、そう思った。



「今度、恭弥と一緒にアジトへ遊びに来いよ」


オレもお前らの笑顔、見慣れなきゃなんねぇよな

'09/12/20


【プレゼント第6弾】
merry Christmas&A Happy New Year!
このサイトにお越しくださる皆様へ、ささやかなプレゼントです♪

ディーノは年上だからこそ、辛くてもそうと言葉にだせないことがたくさんあるんでしょうね!!
隼人がそれを汲みとってやれるようになるのはもう少し先の話になるのですが、そのころには心から笑って話せるディーノさんであってほしいと思います。

ずっと独りだった隼人を見守ってきたディーノさんは、大人として隼人の幸せを応援するのですが、想いはそこまで簡単に操れなくて…。
そんな複雑な心境ながらも微笑むのは彼がボスたる所以なのでしょうね☆

隼人が心配でこっそり後をつけちゃう委員長をトッピングしたほのぼのな感じに纏めてみました!

プレゼントですから、もちろんお持ち帰り自由です♪
クリスマスと新年を祝して。

【緋斗弥】


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