よみきり

□2008/12→2009/1
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〔リクエスト内容〕年上綱×年下獄。

【熟成法とかなんとか】



彼が小さい、自分では歩けないような本当に幼いころから知っている。

淡雪のような肌と秋の陽射しを凝縮したような銀髪に、春の新緑色の瞳。
天使のような容貌の愛らしい男の子。
近所に暮らす獄寺家の長男で名を隼人。

彼はオレによく懐いてくれていた。



「こんにちは、沢田さん!」
「こんにちは。獄寺君」

帰宅途中の道でばったり遭遇したオレ達。笑顔で走ってくる獄寺君。
オレにとってはまだまだ可愛い、細身の少年を抱き上げた。

「んー、思ったより重いかな?大きくなったんだねぇ」
「オレ、もう3年生ですよ!子供じゃありません」
むっとしてパタパタと控え目に足をふる。
自立心も芽生えてくる年だしちょっと言動に気をつけないといけないかなぁなんて考えながら笑った。

「それじゃ、沢田さんは大学へ?」
「うん。いろいろ知らなきゃいけないことがあるんだ」
「そうですか。オレ応援してます!」
「ありがとう」
手を繋いで歩く通学路。
賢い少年は知的な顔で微笑む。その笑顔があれば受験戦争なんて負けるわけないと思えた。

大好きです。
と彼は笑っていて、オレも彼が大好きだった。

あのころは兄弟のようなつもりで。
守ってあげたいと思ったし、傍にいてくれることに安心したりもした。
彼は確かに綺麗な顔立ちをしていたけどまだ可愛いと形容できる容姿だったし、言動も幼さが抜けていなかったから。

この関係はいつまでもつづくんじゃないかと、そう思っていたオレも子供だったんだろう。



そうして次の年オレは大学に進学して、卒業するころには彼は中学生だった。
あう機会はいつのまにか減っていて、両親の話からしか情報がはいらない日々がつづく。
オレにはオレの仕事があってそれを放りだすわけにはいかなかった。

久々にあったのは仕事帰りの商店街。
彼は記憶にあるよりずっと綺麗な顔で微笑んだ。

「お久しぶりです。沢田さん」

「あっ久しぶり、だね…獄寺君」
身長もぐんと伸びて男らしい身体つきになった。
それでも銀の髪も緑の瞳も相変わらずで、宝石みたいで。

「すごく、綺麗になった」
言ってから男の子に使う言葉じゃないと気づいたけどもう遅い。
機嫌を損ねるかと様子を窺うと、彼は困ったような照れたような顔で笑った。

「ありがとうございます」

あのころとは違うんだってことがはっきりしていく。
彼はもともと賢い子だったから、成長は早かったんだろう。
小さなことに反発するような子供はもういない。

「もう高校生なんだね」
「はい」
家が近所なのは変わらないから、お互い帰り道は一緒だし必然的に並んで歩くことになった。
オレが高校生のころはこんな大人っぽく笑わなかったと思う。
昔の育ちのよさそうな服装は、この数年で随分と着崩されて不良のような格好だけど本質は変わってないようだ。
変わらないまま洗礼されてる。

彼はあの商店街の近くでバイトをしているそうだ。
アガリの時間は大体同じだと聞いて、それからのオレはその時間帯うろつくようになった。
まるでストーカーじゃないか、と思ってもやめられず。
偶然を装った帰宅が1ヶ月ほどつづいた。

そしてその日、彼が銀の髪を靡かせてふりかえる。

「それじゃ、オレはここで」
「あ、うん…」

昔みたいに彼に触れたいと思った。
でもあのころのように抱き上げることはできなくて。
考える前に身体が動いた。

「さ、沢田さん!?」
「うん。本当に大きくなったね」
「オレ、もう高校生ですよ…子供じゃありません」

あの日と同じ答え。
あの日と違う声音。
静かに、言いきかせるようにはっきりと。

「もう…子供じゃないんです」

抱きしめるオレの胸を押す腕。
俯く彼の表情は見えなくて、聞こえる声はしっかりしていたのに。
泣きそうだと、思った。

「好きだよ。獄寺君」

「オレも…好きですっでも!でも、違うんです」
銀の髪をゆらして首をふる。
オレから離れようと突っ張る腕をひいて、抱きよせた。
もがく彼の耳元で囁く。

「大丈夫…好きだよ」

いつからなんて知らない。
きっとずっと好きだった。
こんなに好きなのに、いままでよく曖昧にしてこれたと思う。
でももう誤魔化せない。
こんなに愛しいのに、そんなこと。

小さく震えていた腕が躊躇いがちに背にまわった。


もう離してあげられないよ

'09/7/15


【プレゼント第4弾】
merry Christmas&A Happy New Year!
このサイトにお越しくださる皆様へ、ささやかなプレゼントです♪

歳の差をどれくらいにしようかで散々迷いました(笑)

ツナは好きだと気づいちゃえば早いと思ってるんで、そこまでの長い過程のお話。
隼人がいつツナに恋してたかはご想像にお任せします♪

ツナ、隼人を幸せにしてやってよ!!
そんな感じです☆ほのぼのラブカップルになる様子が簡単に妄s…想像できますね!

プレゼントですから、もちろんお持ち帰り自由です♪
クリスマスと新年を祝して。

【緋斗弥】


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