よみきり

□2008/12→2009/1
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〔リクエスト内容〕秘密にお付き合いしている雲×♀獄。

【言葉を贈って】



「おはようございます」

今日もほら、あの子があの男と一緒に登校してくる。



幸せそうに微笑みながら特定の草食動物に話しかける銀髪の少女。
贔屓目に見なくても美少女と評していい。

イタリアと日本の血が混じっているという彼女は、それでも異国の血が強く見慣れない容貌をしていた。
陽に透ける銀の髪、白人特有の透明度の高い肌、挑むような強い眼光をもつ翡翠の瞳。
均等のとれた華奢な体躯はモデルにもそう見られるものではない。

そのすべてを駆使して彼女が従うのは、隣に並ぶひ弱な草食動物だというのだから世の中わからないものだ。

「獄寺隼人。制服の着崩し、スカートの丈、アクセサリーの所持、すべて校則違反だよ」
「ちっ」
すれ違う瞬間、そう声をかければ大仰な舌打ち。
桜色の唇からは外見に不似合いな乱暴な言葉が飛びだす。

「こんな頻繁に校門で服装検査しやがって、風紀委員てのは暇なんだな」
綺麗な足を惜しげもなくさらして仁王立ちしながら僕を睨みつけてくる少女。
その背後に草食動物を庇っているのが気にいらない。

いつだって彼女はそれをわかっていてやめようとはしなかった。
僕の機嫌がどれだけ降下しても、彼女にとってその男以上はない事実をつきつけられる。

本当にイラつくよ。

「君には徹底した指導が必要なようだね。朝のHRが終わったら応接室に来るように」
「誰が行くか!」
べっと舌をだして挑発的に、彼女は僕をひと睨みしてから草食動物と連れたって校舎へ向かっていった。

僕は残りの仕事を風紀委員に任せて応接室へ戻る。
すき好んで群れを見ているわけじゃない。
ただあそこにいればあの子とあえるから、それだけ。



コーヒーを準備していると校舎に響く始業のチャイム。
授業が始まり静かになった廊下を歩くひとり分の足音に自然と笑みがうかんだ。
ほどなくして応接室の扉をノックする音が聞こえる。

「どうぞ」

声をかければ遠慮なく開かれるドア。
ローテーブルにコーヒーを置きながらソファーに座るよう促せば、鍵を閉めてからこちらへ歩いてくる。
そのまま窓際まで行くとカーテンを閉めて、やっと僕を見た翡翠は機嫌を窺うように控えめだ。

「別に怒ってないよ」
小動物を安心させるように優しく手をさしだす。
これでも彼女の境遇は理解しているつもりだ。
一歩一歩確かめるように近づく愛しい身体を強く抱きしめた。
いつものように彼女の腕は僕に触れることなく、重力に逆らわずにいる。

「オレのすべては10代目のものだ」

これがこの子の口癖。
変わらない願いであり、永遠の誓い。

僕はなにも言わずに彼女の背を撫でて腰にまわした腕に力をこめた。
細い身体で必死に生きる彼女を否定することはできなくて、でも僕だけを見てほしいという欲は常にある。

「ヒバリのためには生きれない」
こうして言葉にすることで、この子が自分を戒めていることもわかっていた。

僕に依存してしまうのが怖いと言って、たった一度だけ見せた涙を忘れることはないだろう。
彼女の信念はとても強いけれど未成熟な心の脆さももっていた。
それをひどく愛しいと思う。

僕達がであったとき、すでに彼女の世界にはあの草食動物がいた。
それなしでは地に立つこともできないほどの絶対的存在として。

「でもヒバリ…」
「…うん。僕が君のために生きるから、心配いらないよ」

自分の信念を貫きたいのに僕が好きでどうしたらいいのかわからないと泣いた彼女を、抱きしめた責任がある。
あのとき突き放せばあるいは、これほど苦しませることもなかったのではないかと。

それでも僕には彼女が必要だった。

「不安になることないんだ。僕が君を愛してる…それでいいでしょ?」
だから何度でも言う。
望むように生きればいい。
君が進むなら僕が追いかけてあげるから。
僕が君に依存してあげるから、好きなだけ突き放せばいい。

それでも僕は君を離さない。



彼女は他の男に心奪われたことそのものが、忠誠を誓った主に対する裏切りだと感じるほど追いつめられていた。
だから僕達の間にはなにもない。
そういうことにしている。

どれだけ抱きしめて愛を囁いても、なにもない。
すべては僕が一方的にしていることで彼女は応えていないからと、そうして納得させなければ壊れてしまうだろう。

いつか彼女が、信念と同じだけの心の強さをもてたならそのときは。


愛してると言ってほしい

'09/3/13


【プレゼント第3弾】
merry Christmas&A Happy New Year!
このサイトにお越しくださる皆様へ、ささやかなプレゼントです♪

女獄で、お付き合いをみんなに秘密にしなきゃいけない状況ってのをいくつか考えてみたんですが、一番原作よりの設定で書いてみました。
女としての弱さを認めなくないからお付き合いを公言できない隼人に付き合う雲雀です!

まだ思春期の不安定な心が「生涯の主」と「初恋の相手」を同時に受け止めきれなくて…なイメージで。
将来的には大丈夫だと思います!隼人は強い子ですから☆

それまで雲雀さんには気長に待っていただきたいですね!
珍しく雲雀の方が精神的に大人な雲獄ができました。

プレゼントですから、もちろんお持ち帰り自由です♪
クリスマスと新年を祝して。

【緋斗弥】


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