よみきり

□2008/12→2009/1
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〔リクエスト内容〕甘々クリスマスの2人。

【ヴオン ナターレ】



「24日は空いてるよね」

「ふぇ?」
冬休みにはいる前、応接室で暖をとっていた彼に声をかけると間抜け面で首をかしげた。
「24日だよ。空いてるの?空いてないの?」
「あ、あいて…る」
「そう。だったらそのまま空けておいてね」

困惑したような表情のまま僕を見つめる彼は、賢いくせに色恋に関して鈍い。
12月24日、恋人から予定を尋ねられれば「もしかして」くらい思ってくれてもいいんじゃないだろうか。
他人と付き合ったことなどないから、他のやつらがどうなのかなど知らないけれど。

「クリスマス・イブ、一緒にすごそう」
できるだけ優しく笑いかけると綺麗な瞳がみひらかれる。

うっすらと水の膜がはった翡翠からは驚愕と悲愴が窺えた。
喜んでくれているという感じはなく、僕としても不安になり壊れそうな肩を抱いて白い頬に触れる。
「隼人?」
「クリスマス・イブだぞ…。オレで、いいのか?」

彼の問いかけの半分も意味を理解できなかったけれど、安心させるように頷いた。
なにに不安を感じているかなんて問題じゃない。
僕がすべてから守ると決めた。

「…ありがとう」
はにかむような笑顔に口づけて、約束だけでこんなに喜んでくれるなら最高のイブにしてあげようと思う。
それからすぐに僕は準備にとりかかった。

このときの彼の心境を知らないままだったなら、僕はきっと後悔していただろう。
あの日突然現れた彼の姉には感謝しているんだ。



「待ちなさい、雲雀恭弥」

商店街を少し外れた住宅街。
後ろからかけられた女性の声に振りかえれば、何度か見たことがある彼の姉が立っていた。
澄んだ目許が彼によく似ていて彼女にだけは強くでれない。

僕達の付き合いにあまり賛成していない彼女はことあるごとに突っかかってくるのだが、邪険にできないので対応に苦労させられる。
長引くだろう彼女の講釈を予想するだけで気が滅入ったけれど、それでも無視することすらできないのは彼の愛する肉親だからだ。

姉を嫌いだと公言する彼は、彼女の作る毒を恐れているだけで彼女自身には慈愛の想いをもっていると知っている。
僕が彼女を傷つけることは、彼を傷つけることだ。
彼はなによりも身内の平穏を願っている優しい子だから。

「…なに?」
「vigilia di Nataleを隼人とすごすそうね」
「ヴィ?」
あまりの発音のよさに聞きとれなかった。
「クリスマス・イブよ。私があの子とすごすはずだったのに、よくも邪魔してくれたわね」
殺気が痛い。
他のやつならこちらも殺気で対抗できるものを。
どうやって許しを得ようかと思案していると彼女がため息をついて殺気を解いた。

酷く不本意そうな表情ながらも諦めたような気配をまとっている。
「隼人がとても嬉しそうにしていたから今回は許してあげるわ。でも、あの子になにかしたら承知しないわよ」
やけにあっさりしているな、と思ったところで彼女は僕にある話をした。

それを聞いた直後、携帯の履歴から一番上の番号をコールする。
数回の呼び出し音のあと響く声に優しく囁いた。



「…ツリー」
「飾りつけ、家族でやるものなんでしょ?」

彼に天辺の星を手渡しながら笑いかける。
準備などひとりでしてしまうつもりだったけれど、これも重要なことなのだと知らされた。
だからこうして予定より早く僕の部屋に呼びだしてみたのだけど、どうやら正解だったようだ。
彼は頬を可愛らしく染めて俯くと、こくんと小さく頷く。

『Nataleは家族ですごす幸せの象徴。あの子を世界一幸せにする自信がないのなら、身をひきなさい』

彼の姉の言葉は、彼があのときあれほど驚き喜んだ理由を正確に表していた。

「僕と一緒に、ナターレをすごそう」
「んっ」
可愛い子。
抱きしめれば泣いてしまうとわかっていて、僕はあえてそれをした。
「ケーキも用意してあるよ」
「…んっ」
僕の肩に顔をうずめて震える背を優しく撫でる。
鼻を真っ赤にした彼とツリーの飾りつけをすれば、夕食の時間になっていた。



「いちご」
「うん。君、好きでしょ?」
「…すき」
彼のために用意したのは苺が敷き詰められたクリスマスケーキ。
嬉しそうに一口含んで彼は綺麗に微笑んだ。

「ん」
「え?」
目の前につきつけられた真っ赤な苺。
「ヒバリも食うだろ?ほら」
「君が全部食べていいんだよ?」
彼のために用意したものだ、喜んでくれるなら僕はそれだけでいい。

「好物をあげるのってさ、相手と一緒に美味しいって思いたいからだって…知ってるか?」
「…いま知ったよ」
綺麗な手をとってその指ごと苺を口に含んだ。



「ヴオン ナターレ」

彼の姉に教わったばかりのイタリア語を囁けば、ぱちりと瞬きしたあと悪戯っぽく笑う。
「それは明日だ」
今度は僕が瞬く番だった。


あの子、ナターレに家族とすごすことが憧れだったのよ

'09/1/4


【プレゼント第2弾】
merry Christmas&A Happy New Year!
このサイトにお越しくださる皆様へ、ささやかなプレゼントです♪

Buon Natale(ヴオン ナターレ)伊:クリスマスおめでとう
vigilia di Natale(ヴィジーリア ディ ナターレ)伊:クリスマス・イブ
Natale(ナターレ)伊:クリスマス

ビアンキ姉さんは友情出演☆
雲雀は姉さんだけは邪険にできないといい!!←希望。

隼人が好きすぎて甘やかしオーラ全開な雲雀です。
クリスマス直前くらいに学生って冬休みはいりましたよね?
そんな過去の記憶とイメージで、彼らはいま冬休み中です。だから夜遅くまで起きててもいいんだぜ☆←ご自由にご想像ください。

「Buon Natale」という挨拶は12/25にするものという解釈でいいのか…。
ちょっと曖昧な知識ですみません。間違ってたら教えてください!

プレゼントですから、もちろんお持ち帰り自由です♪
クリスマスと新年を祝して。

【緋斗弥】


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