よみきり

□2008/12→2009/1
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〔リクエスト内容〕ミルフィオーレFの獄に雲雀がひと目惚れ。

【気になってたまらないよ】



新たな匣の情報に、単身その地へ向かう。

沢田綱吉の能力と強さを認めたからといって、やつの言うことにいちいち従うつもりはない。
「危険だから他の守護者の人と…」なんて笑顔で提案していたけれど無視した。

目的は知らないけれど、僕らと同じように匣を集めている群れ≠ェあるという。
相手がなんであれ邪魔になるようなら排除することは沢田綱吉も止めなかった。

すでにやつらとは何度か衝突している。
お互い顔がわれている者もいた。

そして僕は群れ≠ノ顔を知られているひとりだ。

白服とも黒服とも対峙したことがある。
どちらかといえば黒服のほうが手応えがあったかな。
どのみち、僕に敵いはしないだろうけど。



「おっと…こんなとこで逢うとはなぁ?」

背後からかけられた声に驚きはしない。
気配は殺していたようだけど、気づいていた。
ゆっくりとふり返ると軽薄そうに笑みをうかべる男。

「ここに未発見の匣があるってのは、ガセじゃなさそうだ」

群れ≠フ黒服。
はじめてみる顔だった。

「あんた、雲雀恭弥だな?ボンゴレ守護者最強の」

「…誰?」

オールバックの金髪。
跳ね馬より金の濃度が薄いことに、改めて彼の金髪の黄色さ加減を実感した。
本当に派手な色だよね。彼。

「オレは、ブラックスペル第3アフェランドラ隊隊長…γだ」
口角を上げて名乗った男に、僕も笑みで答えて地を蹴った。



「くっ…」

地に伏せた男を見おろしてトンファーをまわす。
多少は歯ごたえもあっただろうか。
それでも、これが隊長では群れ≠フ規模も知れている。

つまらなくてため息をついた。

「もう終わり?」
「くそっ…!」
「ふん。それじゃ死になよ」
最後のひと振りと決めて、男に一撃を加えるべく振りおろす。



一瞬の殺気。



「!?」

攻撃の手をやめ男から飛び退くと、僕の立っていた位置に咲く紅蓮。
純度の高い赤い炎をまとった大きな猫。
アニマル型の匣兵器だ。

あの殺気の正体はこれ?



違う。

男の後ろから新たな気配。
いままで完全に絶たれていたらしい殺気が肌を刺すほどに膨れあがる。

「退くぜ…γ」
「…隼人」
呆然と呟かれた男の言葉。

はやと?

革靴が地を踏む音と共に現れたのは群れ≠フ白服。
白と黒が協力することはほとんどないと聞いていたけど。

流れる銀。



そこから覗いた緑の瞳に射抜かれた。



白い服に肌まで白い。
そして銀の髪。
あまりにも、血生臭い争いとは無縁の姿。

人形のような顔立ちの中にはめこまれた水面の緑だけが力強く、生を主張する。



「何しに来やがった!」
忌々しそうな男の声。
それに嘲笑を返して、白服が口を開いた。

「助けに来てくれたとでも思ったのか?任務は終わりだ。帰るぞ」

そう言った白服の手には古びた匣。
やられた。
ふた手にわかれていたのか。

「待ってよ。僕もそれを探してたんだ…置いていってくれないかい?」
声をかけると白服が僕に向きなおった。
僕を射殺そうとするかのような視線にぞくぞくする。

「…ボンゴレの雲雀恭弥だな」

じくり、と。

身体のどこかが小さな痛みを訴えた。
あの男との戦いで傷などつけられただろうか。

「オレはミルフィオーレファミリー・ホワイトスペルの獄寺隼人だ。これはてめーになんかわたさねぇ」

「そう。それじゃ、実力行使だ」
僕がトンファーを振ると、にやりと“はやと”が笑った。

「瓜」

彼の声に応えて先程の猫が跳びかかってくる。
僕も匣兵器で応戦することにした。
今日はじめての開匣。
雲ハリネズミが飛びだす。

嵐属性の分解だろうと、僕の増殖が負けることなどありえない。
そうして僕は、なんの構えもしない“はやと”に殴りかかった。

彼は口になにかくわえるとジッポーで火をつける。
紫煙があがった。
タバコだ。

それを火種に細身の筒の導火線をつける。

あがる煙、吹きだす白煙。
煙幕!?
視界は完全に遮断されていた。

「キュゥゥゥゥゥゥゥッ!!」

匣兵器の金切り声。
そちらに気をとられていると近づく気配。

地に着いた右足を軸に身体を反転させて攻撃を避けると視界の端をかすめる紅蓮。
あの猫の匣兵器だ。

「今日てめぇと闘んのは分が悪ぃ。じゃーな」

声と共に巻き起こった風が白煙を飛ばしたけれど、すでにそこに彼らの姿はなかった。



 ***



『怪我がなくてなによりです』



電話越しに沢田綱吉の声。

僕の行動を逐一連絡しているわけではない。
ただ、必要があれば情報交換しているだけ。

そして今回、あの白服の情報が欲しかった。
もののついでで匣が1つ群れ≠フ手に渡ったことを伝えると返ってきた言葉がそれだ。

『猫の匣兵器を使うホワイトスペルの“ごくでらはやと”ですか。ここまでわかれば調べはつくと思います』

「そう。それじゃ、よろしくね」
『あ!ヒバリさん』

「…なに?」
『あまり深入りはおすすめしませんよ?危険です』

「僕に意見しないで」
『すみません、でもオレ心配でっ』

「…わかった。情報が欲しいだけだから」
『はい。データはいつもどおり草壁さんに送ります』

ぷつ、通信を終えるときの味気ない音が嫌いだ。
神経を撫でて小さく冷やす。

携帯をとじてポケットに仕舞い、歩きだそうとしたところで足元に気配。



「にゃあ」
「…子猫?」

「にょお!?」

足に擦り寄ってきたかと思えば、僕を見上げてなにやら驚いたらしい。
猫の気持ちなんてわからないけどそんな表情だったように見えた。

毛を逆立てた子猫の耳元が赤く燃える。
嵐属性の匣兵器?

「瓜ぃ。買い出しすんだから帰るぞ?」

間延びした、緊張感のない声。
でも聞き覚えがある。

猫を見ていた視線をあげると陽に光る銀。
なにかを探すように左右に動いていた頭がくるりとこちらを向いた。

澄んだ水面を思わせる緑。

一瞬見開かれたように思えたそれはあまり感情を見せない。
先日の殺気が嘘のようだ。

「瓜」

短く呼ぶ。

聞き間違いでないなら、あの大きな猫を呼んだ名。
それに反応したのは足元の子猫。

「にょおん」

一度僕をふり返って睨みつけるような動作のあと、子猫は彼へ駆けよりその肩へと跳躍した。

「…ペット?」
「相棒だ」

紙袋を抱えた左手とは逆の手で子猫を優しく撫でる手つきは大切なものを扱うそれだ。
気持ちよさそうに眼を細める子猫は僕への警戒を解かない。

「お前、動物に好かれるタイプだろ」
「知らないよ、そんなこと」

気づいたら小鳥が懐いていたことはあったけど、あれは歌が好きだったみたいだし。
面白半分に校歌を教えたら覚えたから気にいって傍においているけど。

「それより、こんなとこで逢えるなんてね…探してたんだ。決着がついてなかっただろ?」

「戦闘狂って情報はあながち間違ってなかったわけか」
愉快そうに彼が笑う。
細められた目許に敵意はなかった。
かといって友好的な色があったわけではないけど。

「今日はオフなんでな。休ませやがれ」

ひらひらと手をふって肩をすくめる。
確かに先日のようなきっちり着込まれた白服ではなく、明るい色のシャツを重ね着してジーンズというラフな服装。
首や腕にはいくつものアクセサリー。

こちらのほうがしっくりくる。
おそらく、これが彼の本来の姿なのだろう。
リラックスしてると言いかえてもいい。

「君の休みなんて知らないよ。せっかく逢ったんだからさ。そのまま帰るなんてつまらないじゃないか」

「オレはいい。今日も分が悪ぃし」
「それじゃ、いつならいいわけ?」

どうにも彼から戦意が感じられない。
戦意を喪失している人間を倒しても意味がないとは思ってないけれど、あのときの殺気を感じての戦いのほうが楽しめる気はした。



「命令が下ったとき」



眼を細めて口角をあげ、形だけ笑ってみせてくる。
感情のともなわない笑みだった。

「なにそれ」

吐き捨てるように言うと、ははっと声をあげて笑う。

「うちはやることやってれば幸せになれんの」

だから、必要外の戦闘に意味はないと。
彼は澄んだ瞳のまま言いきった。

「それに、今日は瓜と遊ぶ約束してんだ。危ねぇことはなし!んじゃな」

僕に背を向け彼は歩きだす。
いっけん無防備に見える後姿だけど、彼は周囲にくまなく気を配りどんな状況にも対応できるよう警戒していた。

いま攻撃を仕掛けても僕の望む展開にはならないとわかっている。
それにこんな街中で騒動を起こせばいくら沢田綱吉でも黙ってはいないだろう。

あの男、あれで怒らせるとなにかと面倒だ。
本気の沢田綱吉と闘ってみたいとは思っているけど、いまは時期じゃない。

まだ“ごくでらはやと”の情報ももらってないしね。



それでもこのまま後ろ姿を見送るだけなのは納得いかなくて、足早に追いかけた。

僕が手を伸ばすとふり向いた彼の肩を掴んで軽く唇をあわせる。
見開かれた緑の瞳に、彼の意表をつけたことを確信して満足した。

意識せず笑みがこぼれる。



「またね」

そう声をかけて背を向けると、彼の肩で子猫が小さく唸った。


彼と関わってみたいと強く思ってる

'09/12/29


【プレゼント第7弾】
merry Christmas&A Happy New Year!
このサイトにお越しくださる皆様へ、ささやかなプレゼントです♪

いま、ふたりがいるのは外国です。 たぶんイタリア。
ツナは日本のアジトですよ☆だから電話。

この場合、嵐の守護者は誰だろう…?
ビアンキ姉さんあたりにやっててもらいたいです!姉弟対決!!

この設定だと隼人は白蘭を本気で信用してなくて言われたまま動いてることがいまの最善だからそうしてる、って感じですね。
だからわざわざヒバリと戦ったりしない。
正チャンとスパナとは仲いいと思います♪γともなんだかんだ仲ようさそうv
その辺の話も書いてみたい…です。

なんか手が早い財団長みたいになっちゃいましたが、ひと目惚れですから(笑)
でもまだ無自覚。

こういうパラレル楽しいです!設定とか考えるのがすごく好きで。いろいろ妄想してひとりで楽しんじゃいました☆
お嬢さまも楽しんでいただけたら幸いです。

プレゼントですから、もちろんお持ち帰り自由です♪
クリスマスと新年を祝して。

【緋斗弥】


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