そのほか

□続編的リクエスト
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(続編希望)
拍手感謝文より【リングに刻まれしは】
初代+綱×獄

内容説明原作18巻より妄想した初代とツナの獄寺の取り合い話

『…な、…て』
声が聞こえた。

「え、なに?」
「どうかしたんスか?10代目」
オレの呟きに、隣を歩いていた獄寺君が足を止める。
オレも一緒に立ち止まって耳を澄ませた。
「んー、なにか声が聞こえたんだけど」
前も後ろも上も下も白い壁で人はいない。
「オレには何も聞こえませんでしたけど…」
困ったように首をかしげる獄寺君の聴力でも聞きとれなかったということは空耳だろうか。

「ごめん、なんでもないよ。行こうか獄寺君」
『…こえ…か?』
まただ。
獄寺君はなにも聞こえてないみたいでオレの隣を歩いている。
聞こえるのは獄寺君の声じゃないけど知らない声でもない。
最近すっごく聞いたような気がする。

『オレの声が聞こえるのか?]世』
あ、ボンゴレT世だ。

「っだぁああ!?」
「じゅっ10代目!?」
オレの悲鳴に獄寺君が不安そうな顔でふりむいた。
「な、なんでもないんだ!ちょっと…そう、つまずいちゃって!」
心配をかけるわけにはいかないと思って両手をのばして顔の前でぶんぶん振る。
獄寺君は気をつけてくださいと優しく笑ってくれた。
なんて可愛い笑顔なんだろう。

『本当にゴクデラは可愛いな』
あ、まだいたんですかT世。
『なんだ、冷たいではないか]世。共にボンゴレの未来を語りあった仲だというのに』
どんな仲だそれは。
そもそもボンゴレの未来よりもっと重大なことを真剣に話しあったような気がする。
左右を確認してみても前回みたいに別空間に行ってしまったような感覚はなかった。
隣では獄寺君がかわらずオレの修行の様子を心配してくれている。

『ああ、そろそろゴクデラをオレに譲る気になったのか』

「誰がなるかぁぁあああ!!」
「ひっ、すいません!?」
「あ」
突然のオレの大声に反射的に謝る獄寺君。
怯えた表情でオレを見て機嫌を窺うように控えめな視線をおくってくる。
「ご、ごめん!!獄寺君のせいじゃないんだ、怒ってないよ!」
『ゴクデラを怯えさせるとは酷いやつだな、]世』
「本当に黙っててください!」
「は、はい!」
「だから獄寺君じゃなくてね?」
もう獄寺君は半分パニック状態だ。
それはオレもだけど。

『少しおちついたらどうだ?]世』
誰のせいだと思ってるんですか。
『オレか』
わかってるなら、話しかけないでください。
『いや…随分と久々にこうして会話できる相手に巡りあえたので、ついな。すまなかった』
久々って歴代のボスの方々はこのボンゴレリングの中で会話してたりするんじゃないんですか?
『するわけないだろう、オレ達をなんだと思ってるんだ』
楽しそうなT世の声が耳の奥、脳に直接響くような錯覚。

幽霊みたいなものかと思ってました。
『少し違うな。オレ達はこのリングに宿った思念の片鱗にすぎない』
しねん…へんりん?
『このリングが特殊な力をもっていることには既に気づいているのだろう?その力がいままでの持ち主の願いや強い想いを繋ぎとめている』
旧式の録音機みたいなものですか?
『そうではなくてだな…我々のもつ死ぬ気の炎を媒体にリングの力を増幅させることで、リングに残ったかすかな意識を具現させているんだ』
なるほど。
適当なオレの相づちにT世が笑う気配がする。
『少し難しかったか?』
ものわかりが良くて助かりますよ、T世。
『つまり、オレの死んだ肉体は既になく。もし魂というものがあるのだとしたらそれも消滅しているか、あるいは転生しているか…いま、おまえと話しているオレは生前リングに宿ったボンゴレの安息を願う想いというわけだ』
ひと通り説明を終えたT世は満足そうな声でそう締めくくった。

『リングに強い炎の波動が伝わることで空気と同化してしまいそうな思念が形をもつ。それがオレ達』
だからあの試練のときあなた達をはっきり見ることができたんですね。
『そうだ、そして試練のとき以外でこうもはっきり意思の疎通ができたのは過去U世を相手にしたときだけだな。直系でオレの子孫としての血が濃いことが原因なんだろうか?』
そんなことは知りませんけど、だったらいまなんでオレと会話なんてしてるんですか。
空気と同化していてくれれば目の前で土下座しようとしている獄寺君を必死で止めることだってなかったのに。

「獄寺君、オレ本当に怒ってないからさ。土下座なんてやめよう、ね?」
「で、でもここにはオレ以外10代目が声をかけるような相手はいないわけで…やっぱりオレが!」
「それは違うんだよ。えっと、その…」
『オレと話していたと言えばいいではないか]世』
「もう、邪魔なんですってば!」
「申し訳ありませんっ」
「ち、違うんだ!獄寺君!!」
『学ばないな…]世』

「ああぁぁああ!!」

オレの叫び声に驚いて、獄寺君は床に膝をつけたままぱちぱちと瞬きをくりかえした。
「獄寺君、いまから話すのは本当のことだから…おちついて聞いてほしいんだけど」

獄寺君の目線までしゃがんでからその肩に手をおいて、綺麗な翡翠の瞳を見つめながら語りかける。
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