そのほか

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(参考アンケートコメント)
・隼人inヴァリアー
・ボスと幹部に愛されまくり

「隼人、起きろぉ!」
扉を開けたさきにある室内を、いつ見てもお姫さまの寝室のようだとスクアーロは思った。

実際この部屋の主はヴァリアーのメンバーから姫のように可愛がられ大切にされているので、あながち間違ってもいない。
しかし姫のようにとは言っても年ごろの男の子だ、こんなきらびやかでフリフリとは真逆の趣味をもっている。

それなのにこの部屋の間取りから装飾まで、すべてを尊敬するボスが用意したという事実ゆえに文句ひとつ唱えることはなかった。
かわりに異議を唱えたスクアーロには花瓶が飛んでくる悲劇だ、余計なことは言わないに限る。

「隼人!朝メシだぁ」
スクアーロが花瓶の痛みを思い出し顔をしかめながら、天蓋付ベッドの淡いピンク色した羽毛布団をめくると頭がふたつ。
「あ゛ぁ?」

そこには天使が2人眠っていた。

1人は銀のさらさらした髪をもつ少年で、この部屋の主の隼人。
白い頬に淡く色づいた唇、愛らしい寝顔はまさに地上に舞い降りた天使といえる。

もう1人は金の髪で顔半分が隠れている少年。
健やかな寝顔は愛らしいと言えなくもないがその正体は天使の皮をかぶった悪魔だ。
「ベル…」

スクアーロは額に手を当てながらため息をついた。
半分ほど日常茶飯事となっているこの光景、彼らのボスに知れたら憤怒の炎が炸裂すること間違いなし。

「また隼人のベッドに潜りこんだなぁ?」
ヴァリアーの幹部クラスになれば、それぞれに最高級の部屋が用意される。
もちろんひとり部屋だ。

ベルフェゴールにも当然立派な自室があるのだが、こうして隼人のクイーンサイズのベッドに潜り込んでいることは珍しくない。
成長途中で細身な2人が寝るには十分な大きさのベッドが用意されていたのがいけなかったのか、持ち主である隼人も突然の訪問者を無理矢理追いださないのだ。

「ベル!起きろぉ?ボスに知られたら大惨事だぁ!!」
ゆすったくらいで起きるような王子様ではない。
だがここで彼を起こさなければ、隼人を起こすようスクアーロに命令した男が隼人にあいに自ら部屋にきてしまう。
そうして男の逆鱗に触れ、部屋が半壊の事態に陥ったことは記憶に新しい。

「ベル!!」
「…っクアーロ?」
「隼人、起きたかぁ」
「そりゃこれだけ大声で怒鳴られれば」
半分開いていない眼を擦ってもぞもぞと隼人が起きあがる。
自分のベッドで寝ているベルフェゴールに気づくと、また潜りこんでたのかと苦笑した。

「今回も隼人が寝てからか?」
「ん、でもくるころだと思ってた」
「あ゛あ゛?」
隼人の頬に唇で朝のあいさつをしてからスクアーロは首を傾げる。
その頬におかえしのあいさつをして、隼人は隣を指さした。

「ほら、最近派手な任務ないから」
ベルフェゴールは自分の感情を抑えるのが苦手で、まるで融通のきかない幼児のようなところがある。
有り余る力を発散させるような任務という名の遊びを与えてやらないと精神が不安定になるのだ。
そうなると食欲不振になったり不眠症になったり、丈夫な肉体とは正反対の危うい精神バランスを安定させるのは彼にとって隼人らしい。

「オレなんかがなんの役に立ってんだかわかんねーけど、ベルが眠れるならオレはいつだって添い寝くらいするぜ?」
そう言って笑う隼人本人には、自分がどれだけ周囲の人間にとって必要不可欠なのかわかっていないのだ。
この鈍感な少年を大勢のオオカミから守るのは自分の役目だとスクアーロは使命感に燃えていた。



寝癖のついた銀の髪を梳いてやると猫のように眼を細める。
「ベル起こしてくれるかぁ?朝メシ、ボスがお呼びだ」

ゆすっても起きない王子様を起こせるのは、彼のお姫様ただひとり。
姫自身に自覚はないし、王様や召使い達も姫の独り占めなんて誰一人許しはしないが。

「ベル、朝だぜ」
耳元で隼人がこの呪文を唱えるだけ。
「おはよ!隼人」
あら不思議、ベルフェゴールは目を覚まして隼人の頬にあいさつするのだ。

ちなみに、スクアーロが彼を起こすには本当に殺す気で斬りかからなければならない。

「ベル、隼人から離れて。ボスが来るよ」
「お、おはよ!マーモン」
突然かかった声にも隼人は笑顔で応えた。
対照的にベルフェゴールを起こせたことで安堵していたスクアーロは口元を引きつらせて顔色をかえる。

「マーモン、ボスが来るのかぁ…?」
「すぐ来るだろうね。僕がベルを起こしに動き出したころにはもう、隼人を待ちくたびれてたから」
部屋の入り口でちょこんと立っている赤ん坊はそう言ってため息をついた。
「レヴィが必死でひきとめてるけど、そう長くはもたないよ」

「ししし、堪え性がないねー」
「てめーが言うな!」
「った!隼人、痛い」
敬愛するボスを悪く言うやつには、隼人の容赦ない鉄拳がまっている。
仲間内のことなので隼人もわきまえてはいるが、やはり気にいらないものは気にいらないのだ。

「ベル!いますぐ隼人のベッドからおりろぉ!そして窓から飛び降りてこの部屋からいなくなれぇ!!」
「えー?やだね!オレは隼人と一緒にいる」

「やだじゃねーぞぉ!!このバカ王子がぁぁああ」
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