そのほか

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(参考アンケートコメント)
・獄のこと好きすぎるツナ様の空回りなど
・右腕大好きなボスを

「お願いだから、ここいいてよ」
敬愛するボスの願いに隼人は首を傾げた。

朝一でボンゴレ10代目のプライベートルームに呼びだされた隼人は、出迎えてくれた綱吉に促されるまま室内に踏みいれソファーに座った。
隼人を迎えいれた姿勢から動かない綱吉は、静かにその扉を閉めて鍵をかける。

「10代目?」
不思議そうに主の名を呼んだ隼人に控えめで申し訳なさそうな笑顔をうかべて綱吉は冒頭の言葉を告げたのだ。



ドン・ボンゴレとして勇ましく雄々しい、一人前の男になった綱吉の見せる数少ない隼人を頼るような微笑。
綱吉の少し頼りないその表情は10年前から変わらない彼らしい穏やかなもので、隼人が密かに愛しいと感じているものだった。

頼もしいボスである綱吉を見るのは部下としても右腕としても誇れることだったが、恋人としては置いていかれたような対等でないような寂しさがあることも事実。
いまの綱吉の姿は恋人同士の時間にしか見せてもらえない貴重ともいえるもので、隼人にとってそれを見せてもらえることは至福だった。

だから綱吉のお願いを聞きいれることに異論はない。
ただ、内容がいまいち要領を得ないので首を傾げるしかなかったのだ。
「どうされたんです?オレの本日の予定に外出はありませんよ」
綱吉に向かってにっこりと微笑む。

このところ不穏な動きをしていたマフィアへの牽制と対策に追われ、隼人は忙しく奔走していた。
それが昨日解決して、今日は比べものにならないほど穏やかな一日になる予定だ。
「10代目も最近お忙しかったでしょうが、昨日伝達したとおり今日は溜まっている書類の整理をゆっくりしていただければ」
「違うよ」
「はい?」

首を横にふる綱吉の真意がつかめなくて隼人は不安に眉をよせた。
ボスの望みを正確なタイミングで叶えることは、優秀な部下の務めだと考えているからだ。
どうすれば綱吉の要望を叶えられるのかと隼人は明晰な頭脳を精一杯働かせる。

「オレと一緒に、ここにいてほしいんだ。オレの部屋でずっと隼人といたい」
「10代目のお部屋で、ですか?」
「そう!最近忙しくてぜんぜん一緒にいられなかったじゃないか。君の姿を廊下で見かけても難しい顔して書類を見てるし、窓から庭にいる君を見たときは必死な顔で人と会話してた」
「はぁ…確かにそうかもしれません」

ボンゴレに危険が迫るかもしれない事態だったのだ、ボスの右腕であり嵐の守護者でもある隼人が中心になるのは当然のこと。
他の守護者や多くの幹部と部下達を、的確な指示で最良の結果をだせるように動かしていかなければいけないのだから、その仕事量といったら半端ではない。
さらに戦力の一人でもあることを誇りとしているために、最前線で力を発揮しようとする隼人は他人の何倍働いていたのかわからなかった。
そんな中で綱吉とゆっくりと話をしたり、いつものように傍に控えていられるはずもないだろう。

しかしボスの右腕である以上、ボスの傍に常に控えてその意思を汲みとることは優先されるべき仕事。
綱吉の言葉に、そのことを指摘され仕事を疎かにしたことに対して注意をうけているのだと判断した隼人はしゅんとうなだれた。

「申し訳ありませんでした!10代目のお傍にいられなかったことはオレの失態です。もうこのようなことが起こらないよう」
「はい、間違い!!」
「ひうっ」
ソファーからおりて額を上質な絨毯に埋めながらひと息で謝罪を口にしていると、いつの間にか傍らに膝をついていた綱吉に両肩を掴まれて上体を起こされる。

失態を許すこともできないほど綱吉が憤慨しているのだと思うと、隼人の肩は意思に反して恐怖に震えた。
隼人が最も恐れているのは、この優しいボスが激昂することなのだから。

「隼人、眼を開けて」
叱られることに怯えてぎゅっと眼を瞑っていた隼人にかけられる優しい声。
その言葉に素直にしたがって開かれた翡翠の瞳がうつしたのは困ったように苦笑する綱吉の姿だった。

「じゅうだ…むうっ」
どうやら自分の勘違いで先走っていたようだと長年の経験で悟った隼人が、真意を問おうと発した言葉は綱吉に飲みこまれて消えていく。
後頭部に腕をまわされ、腰を引き寄せられればもう身動きなどとれはしない。
もともと綱吉の行動に対して抵抗する意思など隼人にはないのだから、あとはバランスをとるためにその逞しい背に腕をまわすだけだった。

「っん、ふぅ…あ」
深く触れあっていた唇が離れると、知らず隼人の口から名残惜しそうな吐息が漏れる。
その様子に綱吉は小さく笑った。

「ね、隼人。昨日夜遅くまで誰といたの?」
「山本と、今回の件の祝杯を」
「飲んだ?」
「の、飲みました」

「一昨日はランボを膝枕してたよね」
「ひざ…あ、はい。あいつ3日間ほとんど寝ずに調査協力してくれましたから」
「その前は了平さんを半裸にしてた」
「半裸に?あのときは…10代目にも報告がいったと思いますが、了平が牽制中に怪我をしまして」

「その前の日はヒバリさんと抱きあってた?」
「抱き!?ち、違いますよ!あれは躓いたところを不覚にも支えられまして」
「さらにその前は骸とドライブ」
「それは調査に向かうのにあいつの力が適任だったからで」

「その前の日にディーノさんと一緒にリボーンの部屋にはいってくのを見たよ」
「あれはリボーンさんの部屋をお借りして最終的な打ち合わせをさせていただいたときかと」
「その前の日が君と会話した一番最近の記憶だ」

「…その日から本格的に動きだしたので、10代目への報告はオレの部下に任せて、え?」
はっと気づいた重要な事実に隼人は頬を染める。

記憶を呼び起こすうちに自然とそれていた視線を戻せば、唇を尖らせて子供のように拗ねた表情を見せる恋人の姿があった。
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