そのほか

□暴走者パーティー
2ページ/17ページ

10年後イタリアで隼人が敵マフィアに捕まって人質にとられてキレるボンゴレ、ウ゛ァリアー、黒曜、キャバッローネの隼人総受け

'07/11/21



よく晴れたイタリアの空の下でその日、ボンゴレ本部に緊張が走った。

「隼人が捕らえられただって!?」
切羽詰った男性の声が部屋に響きわたる。
それはボンゴレ本部の中枢、現在ボンゴレファミリーの頂点に君臨する者の執務室からだった。
そしてその声を発した人物こそ、10代目ボス沢田綱吉その人である。

「ごめんなさいっボンゴレ!獄寺さんはオレを、庇って…ひっうぐ、敵が、たくさん来て…うえっぐず、囲まれて、オレ、オレは…!」
「だー!!もう、わかり辛いから簡潔に話してよ、ランボ!泣いてちゃなにも聞きとれな…もがっ」
ボスの執務机の前、膝を折って泣き崩れるランボに焦れた綱吉が立ちあがると、机に座っていた少年の手がその口をふさいだ。
細身の少年であるのに、その姿は完璧にスーツを着こなしている。
綱吉の家庭教師でありボンゴレ最強のヒットマン、リボーンの落ち着いた物腰は10年たってさらに磨きがかかった。

「アホ牛、おちつけ…おまえしか正確な状況を知ってるやつはいねーんだ」
ぐずぐずと泣きながら必死に事態の概要を伝えようとしていたランボだったが、鼻水をすすりながらではよく聞こえない。
大切な右腕の危機かもしれないのだ、綱吉が慌てるのも理解できるが怯えさせてこれ以上泣かれては話を聞くことはさらに困難になってしまう。
部屋の壁で静かに事態を眺めていた青年が隅の棚からティッシュ箱をとってランボへと放り投げた。
その動きで肩にさげていた刀がちゃきりと小さく鳴る。
静かな殺気をみなぎらせながら、山本武はもといた壁へと寄りかかった。

投げられたティッシュ箱を拾って鼻をかむ姿はいささか情けないが、これでもランボはれっきとしたヒットマンでありボンゴレの守護者。
今回、重要任務として嵐の守護者と共に敵マフィアのアジトへと潜入捜査を行っていた。
目的はあくまで捜査。
最近そのファミリーが不穏な動きで武器の収集を始めたという情報を確かめるためのものだった。
危険なことは絶対にしないで必要な情報を入手後速やかに帰還すること。
それが今回の任務だったはずなのに、泣きながら本部へと連絡してきたランボは、すぐに守護者全員をボスの部屋へ招集してくださいと言ったのだ。

そして泣きすぎて真っ赤になった顔で本部へと戻ってきたのはランボのみだった。

「さあ、ランボ話してくれよ…隼人はいったいどうなった?」
リボーンの手から解放された綱吉がなんとか冷静を装ってイスに座りなおす。
机の上で握りしめられた拳は力が込められすぎてブルブルと震えていた。
すんすんと鼻を鳴らしながらも、なんとか綱吉を見上げてランボが語ったところによれば話はこうだ。

上手く潜入に成功した2人は巨大な武器庫を発見した。
集められた武器の種類や規模を確かめ、彼らが武器を収集し始めた真意を探るために中枢へ向かう。
武器が集められていたのは本当だったのだ。
ならばそれを使ってマフィアが何を行うのか、それを想像するのはそれほど困難なことではない。
なによりそのファミリーは好戦的な者が多いことで有名なのだから。
そして、決定的な話を入手したときだった。

そこからランボの記憶は10年前へ飛んでいる。

「戻ってきたときにはもう囲まれてて…獄寺さんに壁際まで押されたと思ったら、爆発で外に飛ばされて…ぐずっ」
そういう場合の対処法は、ひとりだけでも逃げること。
それはランボが彼と組む場合にふたりで決めた絶対の約束だったのだ。

「10年バズーカ…」
あのころは半分面白がって眺めていたけれど、なんとも厄介な代物だ。
言われてみれば昔、10年バズーカで現れたランボが5分間ひたすら慌てて獄寺に謝りつづけていたことがあった。
昔の自分はなぜ大人しく眺めてしまっていたのだろう。
その場にいた誰もがそう思い、騒がしくはしゃぎまわっていた10年前の子牛を怨んだ。
「やつの安否は確認できたのか?」
いままで黙っていた笹川了平が口を開く。
一見まったく動じていないように見えるが、胸の前で組まれた腕に指が食い込んでいた。

緊迫した空気が室内を支配したとき。

「僕の隼人君の無事は確認しました!早く敵陣へのりこむ手筈を整えましょう!!」
「誰がお前の隼人か!?この腐れナッポーが、土へ還れ!!」
執務室の扉を勢いよく開いたのは霧の守護者の六道骸。
人目もはばからず堂々と右腕を恋人にしたがっている骸への綱吉の警戒は相当なもので、昔では考えられないほど辛辣な言葉を平気で吐く。

「な、なんですかボンゴレ!隼人君が捕まって気が動転しているのはわかりますが、そんな暴言!?は、隼人君に言いつけてやりますから!!」
「なにが言いつけるだ!そんなこと隼人に言ったって…隼人…は無事なの?骸!」
「ゆ、揺さぶらないでくださっボンゴレ!酔う、酔ってしまいますっ!!」
扉まで走りよった綱吉に肩を掴まれ、がくがくと前後に揺れるパイナッポーは視界がぶれて吐く寸前だった。



「つまり…クロームからいち早く獄寺の状態を聞いたおまえは、あのファミリーの人間と契約したんだな」
暴走気味のボスが雨と晴の守護者に押さえつけられている間に、骸が語りリボーンにより分析された情報によって敵内部の状態が鮮明になる。
部屋の隅で静かにしていると思っていたクローム髑髏はせっせと骸に執務室の情報を伝えていたというわけだ。
クロームの両サイドに控えている柿本千種と城島犬も鬼気迫る険しい表情で壁によりかかっている。

獄寺隼人に危険が迫っていると聞いて、おとなしくしていられる人物などボンゴレ中枢には存在していないのだから当然の結果とも言えた。

「ええ、ですからいまならなんとなく内部の状態も感じとれます…隼人君は無事です」
揺さぶられすぎて青ざめてしまった顔で、それでも骸は気丈に頷いてみせる。
「すでに彼も動きだしてますよ」
「…ヒバリか…」
「彼にしては珍しく素直に、師匠さんへ助力を求めに行ってくれました」
骸の言葉に、それは助かるとリボーンは口角をあげた。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ