そのほか

□暴走者パーティー
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雲→獄←骸で獄寺君の取り合い:獄寺君は「どちらも大好き過ぎて選べない」な感じで最終的には「雲→←獄→←骸」で甘く

'07/11/24



ヒバリは優しいけどオレに厳しい。

「あれ美味そう!な、ヒバリ買ってくれよ」
「ダメだよ、君さっきもお菓子食べてただろ?食べすぎ」
「ケチ」
「では僕が買ってさしあげましょうか」
「え?いいのかよ骸!」
「かまいませんよ、でも買ってあげたらその10代目武勇伝はおしまいです」

骸は意地悪だけどオレに激甘だった。

「ちょっと、あんまりこの子甘やかすのやめてよ…こうやって間食するから夕飯がちゃんと食べれないんだ」
「まったく君は隼人君の母親ですか?いいじゃないですか少しくらい食べたいものを食べさせてあげても」
「君がそうやって甘やかすから、隼人がなんでも買ってもらえると思っておねだりするようになっちゃったんじゃないか」
「そんなことないですよ、隼人君は聞きわけのいい子ですしおねだり上手で可愛いじゃないですか」

まるで子供の教育方針にくい違いのある夫婦みたいな会話を繰り広げながらふたりは歩く。
けっきょくオレの食べたかったどら焼きの店は通りすぎてしまった。

ふたりに挟まれて真ん中を歩く休日。
オレはこの時間が嫌いじゃない。

ヒバリと骸はケンカするほど仲がいいってやつだと思う。
ヒバリは絶対言わないだろうけど、骸はヒバリとケンカすると楽しそうに笑った。
オレはそれがとてもいいことだと思っている。
オレ達はどれだけ虚勢をはっても独りで生きていくことなんてできやしない。
いま俺が食べたいと思ったどら焼きだって、あの店のおっちゃんが作ってるからオレが食べれるんだ。
いまは食べられなかったけど、今度は食べてやる。

こんな平穏で当然のことを考えられるようになったのもこの並盛にきてからだった。

人をよせつけないで生きてきたヒバリ、人に虐げられて生きてきた骸、人を信じられずに生きてきたオレ。
それぞれ違うようで、でも同じ。
独りで生きてる気になってた、ただの子供。
それがこうして集まって、休日に意味もなく町内をぶらついて、睨みあって、それなのに楽しくて。

ああ、平和だ。

傷の舐めあいなんてごめんだけど、そういうのと違うんだよな。
お互いの痛みをどうこうっていうんじゃないのに気づいたら一緒にいてそれが心地良くて。
それが幸せだって知った。

「もう、恭弥君はいいです!隼人君は僕が甘やかしてあげますから!!」
突然左腕をひっぱられてよろめくと骸の身体にどん、とぶつかる。
悔しいけど身長差があるせいで骸の力任せの行動には対処しきれない。

「おい、骸?」
「恭弥君てば酷いんですよ、僕は南国にでも帰ってればいいって!僕の故郷は隼人君と同じイタリアなのに…」
オレと同じってところを妙に強調する骸。
感慨にふけってるうちに厄介な展開になってしまったようだった。

「そんな南国フルーツもどきなシルエットしてイタリアとか笑っちゃうね…隼人と同じと言うなら僕はこの子と同じ並中、君は黒曜中、ほら隼人は僕といるべきだろう?」
あきらかにはりあってる。
オレと同じと言う部分を強調しながらヒバリは嘲笑してみせた。

「一緒なものですか!一般人の君とマフィアの隼人君ではすでに世界が違う」
こらこら、オレもあんまり人のことは言えないけどここでマフィアをだすな。
そもそもヒバリはオレ達と違うのかも曖昧だ。
リボーンさんは仲間にしたがってたし。

「だ、だいたい学校なんてどうとでもなります!隼人君、黒曜中にきてください」
ぎゅうっと骸がオレを抱きしめた。
これも身長差のせいでぬけだすことが困難で、もぞもぞと動いてみるけど効果はなさそうだ。
必死な骸には悪いが黒曜にはいけない。
そこには10代目がいないから。

「ちょっと、隼人を離しなよ!嫌がってるじゃないか」
嫌がってはいないけどな、苦しいとは思ってるけど。
深呼吸するとはっきり感じる、骸とヒバリの気配がちくちくしてきた。

戦闘能力が高いふたりは、それにあわせて自分の強さに自信をもってるところがあって、お互いの力の均衡がとれているために衝突することも多い。
つまり丁度いいライバルというわけだ。
でもって、これも悔しくてたまらないから密かに特訓とかしてるんだけど、いまのこいつらにはオレはまったく敵わない。
ふたりが純粋な力でぶつかってしまうととめられないということ。
ここで殴りあいにでもなったら非常にまずい。

「おちつけよ骸、ヒバリも言いすぎたんじゃねーの?」
なんとか宥めようと試みた。
ふたりの機嫌をなおしてもらえなければこの平穏な休日はここで終わる。

「でも、隼人君…」
「僕は悪くないよ、そいつが…」
なんとか骸の腕からぬけだしてふたりを交互にみてやれば、威勢のよかった言葉の語尾がしだいに弱々しくなって消えた。

よかった、はりあいはまだ怒りにまで達していなかったみたいだ。
これならこの言葉で解決する。
「なぁ…オレ腹減ったから、少し早いけど晩飯にしよーぜ!」



それぞれ好きなものをカゴに放り込んで、3人で材料を買って、それを眺めながら今日の晩ご飯を考える。
「骸…これでなにが作れる?」
「まったく君達は、こんななにも考えずにものを買って僕にどうしろっていうんですか!?」

料理に詳しくないオレは食材を見ただけでそれの調理法を考える、なんて芸当は無理だ。
ヒバリも食べる専門だから当然除外。
そして骸はといえば期待を込めてみつめるオレ達に向かって、こてんと首をかしげて料理はひととおりできますよと笑った。

それから誰かの家で食事を作るときは骸が料理長。
骸の指示に従ってオレが動いて、ヒバリは皿への盛りつけ係をしてる。
ヒバリは器用なのにこういった家事全般に対しては全然ダメで、それなのに一度やらせたら配色まで綺麗にまるで高級レストランみたいな盛りつけをしてみせた。
オレはいままで料理に関わってこなかったからやり方を知らなかっただけで骸から教わればそれなりにこなせる。
骸の作る飯は正直どれも絶品だった。

「恭弥君、お肉をいれればハンバーグになるわけじゃないと何度言えばわかってくれるんですか…」
片手にもった袋の中身を確認しながら額をおさえて骸が嘆く。
「肉は肉じゃないか、ハンバーグは肉があれば作れるでしょ?」
「ひき肉を選んでください!僕にわざわざミンチを作れと!?」
骸はこういった会話も楽しむやつだから、とくに怒ってるわけじゃない。

オレの片手にも、ヒバリの片手にも買い物袋、オレのをちらっと確認すれば中に有名なメーカーの板チョコを発見した。
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