【コドモの日】 「オレがさきだ」 「おまえいま横はいりしただろ!」 「バカ野郎、足踏みやがったな」 なんだこれ。 「は!獄寺さん、よくいらっしゃいました」 「ああ、草壁…どうなってんだ?これ」 「はは…皆、委員長を祝いたいのですが」 この祝日にわざわざ並中の応接室に来るオレは相当のまぬけだと思っていたが、これを見る限りそうでもない気がしてきた。 みんなしてリーゼント。 それもラッピングされた箱や袋をもって応接室に行列をつくってる。 そして草壁の言葉とくれば並んでる理由はオレと同じだろう。 「…とりあえず、オレも並ぶか?」 「いえ。獄寺さんはそのまま応接室へどうぞ」 「でもなぁ」 ぼろぼろの姿で応接室からでてくる学ラン姿の男どもを見てればそんな楽をする気はおきない。 これだけ並んで、好みのプレゼントじゃなかったら殴られるなんて理不尽にもほどがある。 しかも殴られたやつはまたプレゼント探しに行って列に並んでるようだ。 いまある列の中にも数人、すでにボコられてるのがいた。 そりゃあいつはプレゼントが欲しいなんて言わなかったんだろうけど、贈り物を選り好みするくらい許されるだろうけど。 「草壁、これもってろ」 「え?これは委員長への…」 「そ。だけどこのままじゃなんか、納得いかねぇ」 「あ、どうぞ」 「おさきに」 我さきにプレゼントを渡したがっていた風紀委員達がオレを見て道をゆずる。 「サンキュ」 次に応接室にはいる番だったやつに礼を言ってノックしてから返事を待たずに扉を開けた。 「まだいるの!?」 「よお」 「隼人!」 トンファーをまわしてふり向いたヒバリに片手をあげて声をかける。 ひと目でイラついてたとわかる表情が一転するさまを見るのはやっぱり自分が特別みたいで嬉しいけど、オレはいまそれにほだされてる場合じゃない。 ちらっと見たローテーブルには数点のプレゼントの包み。 それでもいくつかは受けとったみたいだが、あの人数から考えたら1割ってとこか。 「ごめんね、散らかってて。いま片づけるから」 「いや。それはいいから、トンファー仕舞え」 「うん」 しゅっとかしゃっとかそんな動作ひとつで武器を仕舞ったヒバリはオレに近づこうと一歩踏みだしたけど、手で静止した。 「隼人?」 「まあ座れ」 不思議そうな顔で、でも素直にソファーに座ってオレを窺うヒバリに頷いて後ろ手に扉をあけた。 「順番にはいってこいよ。ちゃんと受けとるから」 「え?」 「あのなぁヒバリ。プレゼントってのは、おまえに喜んでもらいたくてみんなが一生懸命に選んだものなんだよ。あ、順番にそのテーブルに置いてけ」 何か言いたそうなヒバリを眼で制して風紀委員達に指示をだす。 リーゼント達は嬉しそうにヒバリへ祝いの言葉を告げながら部屋をでていった。 最後にはいってきたのは草壁。 「そんで、みんなオレと同じでヒバリを祝いたいわけ」 草壁からうけとったプレゼントをヒバリの手にのせる。 「これはオレから。誕生日おめでと、ヒバリ」 だからこんな日に物騒なことしてないで、素直に祝われとけって。 年に1日くらいいいだろ? '09/5/5 <<戻(よみきり) |