【5】 ディーノにとって雲雀恭弥は後輩にあたる。 隼人と3つの歳の差があるディーノはいま大学1年。 恭弥を風紀委員長に推薦したのは高校時代生徒会長だったディーノなのだ。 当時3年のディーノと1年の恭弥はことあるごとに衝突していたが、ディーノにとっては可愛い後輩にかわりない。 もちろん綱吉を次期生徒会長に推薦したのもディーノだ。 隼人は中学時代からそんな兄の楽しそうな話を聞いていたので志望校を選ぶときためらいもしなかった。 雲雀恭弥のことも前々から知っていたのだ。 ディーノの話ぶりから悪いやつではないと認識しながらも、腕試しと称したケンカで大好きな兄に怪我をさせる恭弥への好感はもてなかったけれど。 「なんか、ディーノが言ってたキョウヤのこと、わかってきた気がする。オレ明日ちゃんと言うな」 「それでこそオレの隼人だ!」 やっとにっこり笑った隼人を抱きしめて、くすぐったいと身をよじる妹とソファーでじゃれあう。 しばらくそうやって笑いあっていると2人の携帯が同じタイミングでメールの受信を知らせた。 「えっと『今日はパスタにしよう。トマトとナスがほしい。父より』だって、ディーノもシャマルからか?」 「おう!同じ内容だ。トマトはあるけどナスはきらしてるから買ってこねーとな」 「そっか、今日は早く帰ってこれるんだな」 「そーみてぇ。よかったな、久々の団欒だ」 「うん!あ、またメール『あと1時間もすれば帰る』ってことは八百屋さんが店仕舞する前に買い物しとけってことかな?」 優秀な医者のシャマルは2人の父親。 両親を亡くしたディーノを引き取った叔父であり、隼人の亡き母と結婚した義父でもある。 隼人の家族は特殊で、父のシャマルとも兄のディーノとも血は繋がっていなかった。 しかし幼いころから2人に愛されてきた隼人にとって血の繋がりなど些細なこと。 いまの隼人にとってはシャマルとディーノが大切な家族だ。 「気分転換に商店街までの散歩もかねてオレが行ってくるぜ!それから駅で待ちあわせてシャマルと帰ってくる。ナスのほかになんかいるかなぁ?」 財布をとりだして買い物へ行く気満々な妹に慌てたのはディーノ。 「こんな時間にひとり歩きなんて危ねーって!一緒に行く」 「こんな時間て…まだ6時だぜ?」 「もう夜じゃねーか!隼人みたいな可愛い娘が出歩く時間じゃねぇって!!」 「大丈夫だって」 「だったらオレが行くから、隼人は戸締りして待ってろ」 「ディーノは夕飯の準備しといてくれよ。ほら鍋とかオレじゃ棚に手も届かないし」 過保護な兄と危機感の薄い妹がそんな会話をしながら玄関の扉を開けると、門の前でインターフォンを鳴らそうとしていた男と鉢合わせた。 「むくっ…ろ、六道先輩!?」 「こんばんは。隼人君」 男はにっこりと人好きする穏やかさで微笑んだ。 家族の存在は心を穏やかにするのです '09/2/9 <<戻(にせきんか) |