そのほか

□暴走者パーティー
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今日はオレの家で夕食を作る。

「隼人君、この玉ネギもう少し細かく刻んでもらえますか?」
「おう!」
刃物のあつかい自体は難しくない。
あとは使い方の問題だ。
力まかせでは理想の形に切れないから、力加減ってやつを骸に教わった。
最初のころは不恰好な刻み方だったそれも、いまでは綺麗に思いどおり刻める。

「クフフ…こうしてると僕達新婚さんみたいですね」
鍋をかきまぜながら楽しそうに骸が笑った。
鮮やかな色あいのオッドアイが甘く細められて引力にすいよせられるように目が離せない。
「隼人君、そろそろ決まりましたか?」
お玉を握っていた長い指がオレの頬を優しく滑って顎でとまる。

切なそうに伏せられていく瞳になにか言わなければと思うのに、オレはまだこたえをだせていないんだ。

「骸…オレっ!」
「隼人、僕の気持ちに応える気はない?」
後ろから抱きしめられて身動きがとれない。
かけようとした言葉も見失ってしまった。
「ヒ、バリ」

「君は優しい子ですね」
骸が頭を撫でてくる。
「でも優しいだけじゃダメだよ」
ヒバリの腕の力は強まった。

オレに厳しいヒバリとオレに意地悪な骸。
オレに甘い骸とオレに優しいヒバリ。

ふたりから告白されたのは数ヶ月前のことで、オレはまだどちらにも返事をしていない。
そんなオレをふたりは急かさなかったから甘えてしまっていた。
本当はそんな宙ぶらりんな状態にふたりが満足してはいないことも、それでも我慢してくれるのがオレのためだってこともわかってる。
オレは早く結論をださなきゃいけないのに。

さんにんでいられる時間が心地よかったから。

「…野菜スープに、玉ネギのみじん切りなんて使わない…」
「隼人?」
「ヒバリが適当な肉買おうとしてるあいだに、骸がひき肉買ってたこと知ってるんだ」
骸が眉をよせて、見られてましたかって笑う。
照れたときに困ったように微笑むのは癖だ。

「…骸が好きなメーカーのチョコレート、テーブルの上の袋にはいってる…」
「隼人君?」
「いつもじっと見てるだろ?今日ヒバリが買ってた」
まわされた腕に乱暴に力が込められて、ヒバリが余計なことをって意思表示してくる。
骸は好みなんて自分から言ったことないけど、欲しそうにしていたからオレ達は気づいてた。

「今日の晩飯は、野菜スープとハンバーグであのチョコレートはそのお礼で…」

ふたりの優しさは一緒にすごすたびに知っていく。
よせられる好意は恥ずかしいと思うほど直球であたたかい。
向けられるやわらかな笑顔に優越感。
オレはこいつらに想われるほどの人間だろうか。
その疑問は日に日に強くなっていく。

ふたりの優しさに触れるたび、オレは自分の醜さを痛感する。
大切にされてることに気づいたときには遅かった。
ふたりはオレにとってきっと恋人より深い。

「オレなんかにはもったいねーんだよ…」

これほどの想いをもっているのなら、それをうけた者はどれほど幸せになれるんだろう。
オレ自身が体験済みで、だからこそ強く思った。
ふたりの好意をうけとるにはオレはあまりにも汚い。

「隼人、泣かないで」
「隼人君…君はどうしてこんなに」
目許に指が触れて、頭を抱きこまれて、ふたりの関心がオレだけに向かっていることに満足すると同時にそう感じる自分を嫌悪する。
ふたりに心配される資格なんてオレにはないのに。

「隼人君、聞いてください」
両頬を手で包まれて骸と視線をあわせる。
「君だから僕達はこれほどに君を想って行動できるんです」
勘違いしないで、と訴えてくる瞳。

頭を撫でられる感覚に隣を見ればヒバリが不器用な表情をつくっていた。
怒ってるような、嘲っているような、困っているような複雑な表情。
「君以外にこんな想いを向けるつもりもなければ、可能性もないよ」
ゆっくりだった手の動きが乱暴になってわしゃわしゃと動きだす。
「隼人がいいんだ」

そんなことを言われて、オレはどうすればいいんだろう。

「君の気持ちを素直に言ってください」
「僕達は君の願いが聞きたいんだよ」
優しい笑顔がオレに向けられる。
ふたりをオレから解放してあげたいと思うのに、上手く頭が働かない。

「…うれ、しい」

それだけ言って抱きついたオレを、ふたりは呆れたようにため息をついてから強く抱きしめてくれた。



【その想いの行方】

そんな君だから僕達はすべてをかけて愛する

'07/12/29



【10000HIT第4弾】
悠依様、お待たせいたしました!

ふたりのため息は「もう、この子はどうしてこんなに可愛いの」っていう恍惚のため息です。
「なにこの可愛い生き物!!」みたいな衝撃を彼らは常にうけてます。
この3人の関係がこのさき、なんらかのかたちで変わっていくのか、それとも一生このままなのかはわかりません。
ご想像におまかせします♪

骸と雲雀には隼人をとりあって、それでもどこか仲良くしていてくれればいいと思います。
隼人はそんなふたりに幸せにしてもらえばいいですね!

ではパーティー参加大変ありがとうございました!!
今後ともよろしくお願いいたします。

【緋斗弥】


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