*銀土妄想記*


◆土誕小ネタ 疾風

寒い。

微睡む意識の中、土方は唐突にそう感じ身じろいだ。
五月の始めだというのに未だ肌寒さが抜けない日々が続く。
温もりを求めてさ迷わせた腕には冷たいシーツの感触しか伝わってこない。
隣にいるはずの温もりが見つからなくて一抹の不安を感じたとき、冷えた手を掬い上げる熱があった。

「おはよう、土方」
「…テメー、どこ行ってた」

指を絡められ、次いで僅かな冷気と共に熱を帯びた身体が滑り込んでくる。
ほっと息を洩らしたのを悟られたくなくて、つい恨みがましい声が出た。

「朝飯作ってたんだよ。今日は食っていけるんだろ?」
「……あぁ」

何も纏っていない自分と違い着流しを羽織った男に引き寄せられ、腰に回った腕で更に密着すると、男の匂いに包まれた形になる。
無意識に擦り寄った頭を撫で、鼻の頭にキスを落とした男が蜜のようにとろりとした声で囁いた。

「誕生日おめでとう、十四郎」

愛してるよ、と普段の男を知る者が聞けば信じられないほどの甘い声音に耳が熱くなる。
不意打ちでこういうことをするから尚更タチが悪い。

「…卑怯だ、テメェの声は」

何もかも享受し包み込んで甘やかすから、どろどろに溶かされる。
それを心地良いと思っているなんて、死んでも言わないけど。

「そんなこと言って。好きなくせに」

クツクツと喉を震わす男には全てお見通しなのだろう。
癪だから、目の前にある胸に頭突きをしてやった。

今年の誕生日も、甘やかされるに違いない。



------------------
改めておめでとう^^

2011/05/05(Thu) 23:36

[コメント書込]

[戻る]
[TOPへ]
[カスタマイズ]



©フォレストページ