「(ったく新八の奴、余計な気ィ回しやがって。まぁおかげでイイコト聞けたけど)」

新八と神楽の気配が完全に消えたことを確認して、銀時は長く深い息をはいた。
だがその息には隠しきれない悦びが滲んでいる。
緩みそうになる口許を必死に引き結んで、銀時は隣の襖に手を掛けてみた。

「お待たせ」
「別に待ってねェ」

予想通りの反応だったが、今の状況では全てが可愛くみえる。

「眼鏡とチャイナはどうした?今出ていく音が聞こえたが」
「お妙ンとこ。アイツらなりに気ィ遣ったらしくてよ」

新八から聞いたことはあくまでも言わずに布団の上で胡坐をかく土方に近付いていく。
待っていないと言いながらも先に寝ていなかったということは、少しは自惚れてもいいのだろうか。
陶器のように白い頬に指先を滑らせる。

「ったくガキ共に余計な気ィ回させんじゃねェよ」

だがその指は軽く抓られ叩き落とされてしまう。

「でもよォ、そろそろ俺に構ってくれても良くね?俺ずっとお預け食わされてんだけど」
「あァ?さっき鍋たらふく食っただろうが」
「…テメェ、ぜってーワザと言ってるだろ」

なかなか尻尾を出さない土方に流石に焦れて、銀時は目を据わらせる。
すると土方は一瞬きょとんとした顔を見せた後、馬鹿にしたように鼻を鳴らし笑った。

「なんだ、気付いてたのか」
「え、」
「鍋ンときも本気で落ち込みやがるから気付いてねーのかと思ってた」
「ま、まァな。演技だよ演技」

もちろん、嘘である。
本当は新八に言われるまで気付けなかったのだから。
動揺を悟られないように引き攣った笑みを浮かべる。
だが幸いにも土方は疑問に思わなかったようで、上機嫌に口の端を持ち上げている。
なんだか最後まで土方に踊らされている気がして銀時はちくしょう、と心中で呟いた。
どうやら今回は最後まで土方に軍配が上がったらしい。
だがしかし、そのまま勝ち逃げさせてやれるほど、銀時の心は広くなかった。

「…それで?いつまでしらばっくれるつもりだよ?」

挑発的な土方の言葉に、銀時は理性の箍を僅かに外した。

「覚悟しとけ。今日は目茶苦茶に甘やかして、どろっどろに溶かしてやっからな」

土方の後頭部に手を回してグッと引き寄せる。
唇が触れるか触れないかの距離で囁いて、返事を待たずにその唇に喰らい付いた。


素直に甘えられないのならそれでもいい。
その代わり、容赦はしてやらない。
自分から強請るように舌を差し出してきた土方にひっそりと笑んで、銀時は口吻けを深いものにした。

















-今度こそfin-

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