コミックス

□「宮本武蔵」
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「宮本武蔵」
石ノ森章太郎 著
角川書店


『仮面ライダー』『がんばれロボコン』『人造人間キカイダー』『秘密戦隊ゴレンジャー』などでお馴染みの巨匠・石ノ森章太郎が描いた『宮本武蔵』です。

1971年〜72年に『希望の友/増刊号』に連載されていた作品集。

『バガボンド』(井上雄彦/講談社)人気にあやかってか、幅広い年齢層の視聴率獲得を狙うNHKの大河ドラマでも、2003年1月から市川新之助(現、市川海老蔵)主演で『武蔵 MUSASHI』が始まりました。本書も武蔵ブームに便乗した刊行なのかもしれませんが、一見の価値ありな作品です。

『バガボンド』もNHK『武蔵』も原作は吉川英治。ドラマの脚本は、鎌田敏夫。ですが、ドラマ放映の直前に刊行された本書は、原作、作画とも石ノ森章太郎によるもの。

ページを開かなければコミック本とは思えないような、ずしんと重みのあるハードカバーの装丁で、だからというわけでなく圧巻です。
出版社の気合いを感じます。
こちらも厳かな気持ちでページを繰りたくなるのが人情かと思うのです。
 
やわらかく温かみのある作画とシンプルで素朴な描き方とで、著者独自の武蔵像がすんなりと心に沁み込んできます。

『バガボンド』とは、きわめて対照的な立体像。
それほど無頼・アウトローとしてのイメージではなく、無頼は無頼でも、品格あふれる兵法家や武士としての無頼者に描かれています。

『五輪書』のベースもわかりやすいです。

武蔵の生きた1584年〜1645年、戦国の時代から江戸の初期にかけての大きく歴史が変わっていくパワフルな時代に、たやすくタイムトリップさせてもらえることと思います。

ページを繰っていくごとに、懐かしい気分に浸ってしまえるような親近感を覚えて楽しいです。

たぶん、それは、昆虫や動物たちの微笑ましいひとコマが実に効果的に描かれていること、庶民の暮らしぶりがさり気なく細やかに反映されているていねいなカット描写があることなど、ポイント、ポイントでゆったりとした時間の流れを印象づけられるからなのかもしれません。


2002.11.30 初版発行
\1,900



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