† TREASURE †

□† 味見 †
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―味見―




「ヒョーンッ!ちょっと来て下さい、キッチンですよ!」

「あー?どうした?」


部屋で荷物を解いていたユノを呼ぶチャンミンの、
どこか楽しげに弾んだ声。


「早くッ早くッ」

「うわッ!何だこれッ」


呼ばれて入ったキッチンは、まるでバスルームのようで、
ユノは思わず両手をバタつかせて、
もうもうと溢れる白い湯気を払った。


「あ、すみません。換気扇がドコのボタンか分らなくて……」

「換気扇?ああそっか…説明書は…?と…」


男所帯には、不相応なほど最新のシステムキッチン。

やれやれ、引っ越したばかりだというのに、とユノが眉を顰める。


「あとでマネージャーに訊いておきます。
それよりユノッ、はい、これッ味見してッ」


そんなことには目もくれずに、
チャンミンは箸の先に絡めたパスタを、
ユノの口へと運んできた。


「はい、あーん」

「ん? あー…ん?」


無防備に、開いた口。

差し出されたものを入れられて、
もぐもぐと咀嚼するユノ。


「……どうですか?」


心配そうに上目で窺うチャンミンの様子に、
ユノは目を細めると親指を立ててみせる。


「カルボナーラ?…うん。美味いよ?」

「ホントに?」

「ああ、チャンミンが作ったの?すごいな」

「えへへ…」


このところ、柔らかくなったと評判の表情を、
一層くしゃくしゃにさせた汗だくの笑顔。

それを見るユノは、抱き締めたくなる衝動を堪えて、
わざと渋面を作ってみせた。


「ん……だけど、何か足りない」

「お?…足りない?何が?」


段違いだった眉を顰めて、心配そうに傾げる首。

箸を持ったまま戸惑うチャンミン。

そのエプロンを巻いた細い腰を、グイと引き寄せる。


「……あッ……!」


ユノはその耳許に唇と声を置いた。


「塩分……」

「え、んぶん?」

「うん……」

「ヒョ…あ、じゃあ、お塩…ひゃ…ぁ…ッ……」


くすぐったそうに、
肩を竦めるチャンミンの汗で濡れた首筋に、
舌を這わせるユノ。


「……いい、『ここ』から貰う」

「あ…やぁ……」


果てしなく甘く拒む声を残して、
二人縺れるように床に転がれば、早急に求め合うのが常。

全身をくまなく柔らかな舌で愛でられ、
チャンミンは堪えきれない愉悦の声を、湿ったキッチン中に響かせた。









「うん、…まずくはないけど、麺が伸びちゃったな……」

「誰の所為だと思ってますか?」


せっかくの自信作を……と、
肩を落としてみせるチャンミン。


「ごめん」

「もう、ヒョンには味見させませんッ」

「チャンミナ〜」

「そんな声出してもダメです」

「…も少し、塩分……」


からかうように、ユノが突き出す唇を睨んで、
むっと口を結ぶチャンミン。


「健康のため、塩分控えめです!」

「…は〜い」


上気したまま薄紅で小言のチャンミンを眺めれば、
自然に笑顔が浮かんでくる。

ユノは、手にしたフォークで麺を絡めると、
かけがえない、しかし少しふやけた幸せを頬張った。








――おしまい



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孤蝶様サイト開設4周年、おめでとうございます♪
そして、弊サイトへの寄稿、並びに、
リンクして頂きまして、ありがとうございます(土下座)

ホミン東方神起が、日本での活動を本格的にしていく嬉しい今年
新たな宿舎が用意されたとの情報に浮き足立ちました♪
そんな宿舎で、若奥さんが美しい旦那のために腕を揮うお料理。
どんな料理よりも、ユノヒョンが一番美味しいのは、
自分だということに気付いてないのか、小鹿!みたいな(笑)
そんな心ばかりの駄文ですが←
感謝を籠めて……


ゆのじ拝

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